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2006年03月31日(金)
新大関・白鵬が「早く大関になれた理由」

朝日新聞の記事より。


【大関昇進が正式に決まった白鵬(21)=本名ムンフバト・ダバジャルガル、モンゴル出身、宮城野部屋。伝達式のあった29日は、師匠やモンゴルから来日中の両親らと喜びを分かち合ったが、これで満足したわけではない。関係者からは「次は横綱」との声が早くも高まっている。

 白鵬の記者会見での主な一問一答は次の通り。

 ――口上に「全身全霊」を入れた思いは。

 身も心もすべてかけてという意味。相撲に自分のすべてをささげるという気持ちで入れた。

 ――入門から5年で大関。どう感じているか。

 幕内に上がった時から、頑張ればいけるかなという気持ちはあった。こんなに早くなるとは思っていなかった。

 ――早く大関になれた理由は。

 まず日本語を早く覚えたこと。一番大切なけいこで、最初は親方や先輩が言っていることが分からなかった。日本語を覚えて、分かってくると、相撲も強くなった。次に太らないと勝てないと思って、ご飯をいっぱい食べた。あとは寝ること。寝るのが好きだから。】

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 白鵬関のお父さんはモンゴル相撲の大横綱だそうで、まさに「相撲のサラブレッド」という感じなのですが、この新進気鋭の21歳の若者が「早く大関になれた理由」として最初に挙げたことが「日本語を早く覚えたこと」だったのは、僕にはちょっと意外な感じがしました。えっ?言葉がいちばんの理由なの?って。だって、相撲は言葉で勝負するものではないのだから。
 でも、確かに「けいこで周りが言っていることがわからない」というのは、技術を磨くには、大きなハンディキャップではありますよね。そしてもちろん、日常生活においても「言葉がわからない」というのは、入門当時まだ16歳だった白鵬関にとっては、ものすごく辛かっただろうな、と思います。いくら天性のセンスを持っていたとしても、やはり、相撲という競技には相撲なりの勘所みたいなのがあって、ある程度そのコツみたいなものがつかめなければ、なかなか勝てない面もあるでしょうし、それには親方や先輩たちとのコミュニケーションは必要不可欠なはずです。
 まあ、白鵬関がこうして「言葉のこと」を最初に挙げたのは、「言葉の問題がいちばん辛かった」ということの裏返しなのかもしれません。逆に、「自分の相撲の才能への確固たる自信」も感じますけど。

 「日本の相撲界は、外国人力士にばかり活躍されて…」なんて、つい嘆いてしまいがちなのですが、考えてみれば、「外国人力士」というのは、「言葉の壁」があるだけでも、日本人力士よりもスタート地点ではかなり不利ではあるのですよね。相撲の才能はあっても、「言葉の壁」にはね返されて成功できなかった「仲間」たちのことを、白鵬関はたくさん知っているのでしょう。白鵬関は、相撲だけでなく、「言葉を覚える」「日本という国に慣れる」という、土俵の外の勝負にも勝って、今の地位にまで上り詰めたのです。
 「勝負の世界」とは言うけれど、「力」だけで勝てるほど甘くはないんですよね、きっと。逆に、「学問の世界」だって、最後にモノを言うのは研究を続けられる体力と世渡りの才能だったりするものなあ。