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2006年03月30日(木)
「自分らしさ」を見つけてくれる人々

「NAMABON」2006年4月号(アクセス・パブリッシング)の辻よしなりさんの連載エッセイ「バイブルはもういらない」より。

【内面の自分だけではなく、外面の自分、いわゆる人から見た自分ほど解らないものはありません。そう、何を着たら一番自分らしいのか。それをアドバイスして、商売にしている人たちが出現しています。
『パーソナルスタイリスト』
 芸能界の人たちや、政府の要人、企業の社長クラスなどには、よくスタイリストと呼ばれるファッションアドバイザーがついています。その人にあった衣装を見つけるというのは正直言って至難の業になってくることは、日ごろの生活の中で私たちは理解しています。何を買ったらいいんだろう、自分らしさを出しながら、でも新しい雰囲気にチャレンジしてみたい。その手助けをしてくれる人がいるんですねぇ。
 まずは問診から入ります。
 仕事は何をしているのか。
 趣味は?
 顔の形や体格はどうか。
 何色が好きなのか。
 故郷はどこか。
 夢は何がある。
 こんなことを事細かに質問をしていって、その人の人となりを見るんだそうです。そして、今までに着たことのない色やデザインの服を一緒にチョイス。買い物に付き合ってくれるんですね。また、自宅まで来てくれてどの服を上手く着まわしていけばいいのかを、教えてくれるんだそうです。相変わらずのポロシャツにチノパンから何とか脱却したい僕を含めた男の人なんかにも、かなり人気が上がっているみたいです。
 しかし、料金が4万〜8万。かなり張るような気がするけど、無駄なものを買い続けるよりもむしろお得だと、もっぱらの評判らしい。
 今や『自分らしさ』は、見つけるものじゃなく、お金で買える時代になりました!】

〜〜〜〜〜〜〜

 ミスチルの歌に、
♪自分らしさの檻のなかで もがいてるなら 誰だってそう 僕だってそうなんだ
 というフレーズがあるのですが、僕は30年あまり生きてきて、結局「自分らしさ」というのがどんなものなのか、よくわからないのです。「自分のやりたいようにやる」=「自分らしさ」だと思っている人もいるみたいですが、やっぱりそれはちょっと違うような気がするし。
 でも、この文章を読んで、僕はあらためて考えました。結局、「自分らしさ」は自分では決められず、他人に「あの人に似合う」と思ってもらえるかどうかだけなのかもしれないな、と。
 もちろん、「センスのよしあし」というのはあるのでしょうが、その「センス」というのも他人の評価だしね。
 この『パーソナルスタイリスト』という職業のこと、僕はこの文章ではじめて知ったのですが、確かに、こういう職業にはニーズはあるだろうなあ、と思います。さすがに僕は自分が着る服を決めてもらうためだけに4万から8万を投資することにはためらいがありますが、人前に出ることが多い職業の人にとっては、「どんな服を着ているか」で値踏みされることって、けっこうあるはずだし、「自分がセンスのいい服を着ている」と思えるだけで、背筋だって伸びるかもしれません。逆に、本人が自信を持って着ることができれば、どんな服だって、それなりに「その人らしく」見えるのではないか、という気もします。それで自分に自信が持てるなら、けっして高すぎる投資ではないはずです。
 それにしても、その「自分らしさ」がカッコいいかどうかって、結局は、他人の評価なんですよね。『パーソナルスタイリスト』が決めてくれるのは、所詮、他人からみた「あなたらしさ」であって、本当の「自分らしさ」ではないのです。
 まあ、現実的には、自分で選んだ「自分らしくてカッコ悪い服装」よりも、誰かが選んでくれた「本当に自分らしいかどうかはともかく、似合う服装」のほうが、はるかにメリットが大きいのですけどね。