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活字中毒R。
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2006年01月02日(月)
「普通に暮らしている中でつくる」ということ

あけましておめでとうございます。
今年も『活字中毒R。』をよろしくお願いいたします。
2005年の総集編はこちらからどうぞ。

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「執筆前夜〜女性作家10人が語る、プロの仕事の舞台裏。」(クリエイターズワールド編集部・編、新風舎)より。

(女性作家10人への作家になったきっかけや「書くこと」に対する考えかたなどについてのインタビュー集から、恩田陸さんの回の一部です)

【インタビュアー:恩田さんお作品はエンターテインメント性に優れたものばかりだが、『夜のピクニック』では学校行事が扱われているように、身近なことも題材としている。学校行事の思い出も、彼女の手にかかると一夜の奇跡の物語となる。その作品を読んでいると、どんな体験をしたか、ではなく、どんなふうに見て、どんなふうに感じたか、が小説を書くうえで重要なのではないかと思えてくる。

恩田:それこそね、人生の辛酸をなめ尽くして作家になりましたとかいう、特殊な体験がある人もなんだかうらやましいと思うんですけど、それならば小説じゃなくて体験談を書けばいい。私はエキセントリックな芸術家というのをあんまり信用していないんです。普通に暮らしている中でつくる、ということが大事ではないかと思うので。とにかく、どんなことでも面白がれるか、そしてそのうえでどう演出するか、だと思います。
 以前はとにかくジェットコースターのようなストーリーを書きたいと思ってたんですけど、最近では面白さにもいろいろあるんだな、と思うようになりました。面白いものだけを集めれば面白いかっていうと、そうじゃない。面白くないものも含めて面白いってこともあるんだな、と。そういうことがやっとわかってきた。だから、今はただ読んでいてなんとなく面白い本を書きたいですね。最後はどうなるんだろうと思って一生懸命読むんじゃなくて、読んでいる途中が面白い、浸っているのが楽しい、という小説を書いてみたいです。】

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 このインタビュー集を読んでいて感じたのは、現代の女性作家たちは、みんな「普通の暮らし」というのをすごく大事なものだと考えているのだな、ということでした。作家というのは「いろいろな人生経験」が必要な職業だというイメージがあるのですが、彼女たちは、世界旅行の経験だとか、ドロドロの不倫ではなくて、「一般企業でのOL経験」や「学生時代の恋人との普通の恋愛」がとても重要なのだ、と口を揃えて語っているのです。確かに、そんな珍しい人生経験がある人なら、【それならば小説じゃなくて体験談を書けばいい】のですよね。そして、書くためのテーマというのはどこにでも転がっていて、「体験」の差ではなく【どんなことでも面白がれるか、そしてそのうえでどう演出するか】というのが、書けるかどうかの違いなんですよね。考え方によっては、「体験」を重視する人は、言葉にする必要性すら感じないかもしれないし。
 それに、どんなに「面白い体験」をしてきた人でも、その「体験」だけに頼っていれば、いつかはネタ切れしてしまうでしょうし。
 もちろん、そういう「特別な実体験」を描く、破天荒な「無頼派」の世界も魅力的ではあるのですが、「普通の生活をしているから書くことがない」とも限らないみたいです。
 まあ、そんなふうに僕もわかったようなことを書いていますが、実際にはその「普通の体験」のなかから面白いことを拾い上げていくというのは、面白い経験を書くこと以上に難しいことなのだと思うのですけど。