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2005年12月04日(日) ■ |
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素っ裸で、鏡の前に立ったことがありますか? |
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「最後の晩餐」(集英社)より。
(「ニュースステーション」の中で行われた、久米宏さんとゲストが「人生最後の食事は、どんなものを食べるか?」について話すという対談コーナー「最後の晩餐」を書籍化したものです。葉月里緒菜さんがゲストの回より)
【久米:こんな質問しちゃ、怒られるかなあ。
葉月:なんでも聞いてください。
久米:全身大の鏡って、お宅にありますか。
葉月:あります。
久米:目が大切だって言ったんですけど、素っ裸で、その前に立ったことありますか。
葉月:あります。
久米:どんな体つきしてるんですか。
葉月:どんな体つき……。
久米:ぼく、最初にあなたのコマーシャルを見て、これは何者だって、こいつはなんなんだって思ったときに、ひょっとして、この人、人間じゃないんじゃないかって思ったの。
葉月:はははは。
久米:宇宙人じゃないかとか、あるいは人工的に作られたものじゃないかと。最初の印象って、ひょっとしてマネキンじゃないかと思ったぐらいなんです。だから、本当に人間の肉体なのかという疑問をいまだに持ってるんですよ。
葉月:普通の人間の肉体です。
久米:自分の言葉で描写すると、どんな肉体が映ってるんですか、鏡のなかに。
葉月:そうねえ……、なんでしょう……、セクシーさは感じませんね。感じないけれども、すごい好きですね、自分の体が。で、どんなって……。言葉で説明できないですよ。じゃ、久米さんは同ですか。鏡に、どういう体が映りますか。
久米:うん、年のわりにはお腹は出てないし、わりと膝から下、細いなあとか思うなあ。
葉月:はあはあ。
久米:で、腰骨が、もうちょっと張ってたらいいのになあと思うかな。
葉月:そういうのだったら、私は女のわりには、胸がないなっていうのがありますね。でも、あとは、教科書とかで、保健の時間に勉強するときに、女性の体と男性の体、分かれてるじゃないですか、あれの女性の体の、あのモデルっぽい体ですね、脚とかも。
久米:さっき、自分の体が好きですって言ったでしょ、どこが?
葉月:その胸のないところ、この体とこの顔には合ってるんですよ。この顔で、胸がDカップあったら、全然、山田麻衣、葉月里緒菜じゃなくなっちゃうんですよね。これは、もう22年間、ずーっとこの体を見てきているんで、全部好きです。
久米:でも、5歳のときとは、だいぶ違うと思うな(笑)。
葉月:それはそうですけど、たぶん、あのときも、鏡を見てて、自分のこと、好きだったと思います。両親から、常に自分のことを好きでいなさいと、いつも言われていたんです。何をしてもいい、いろんなことにトライしてみなさい。いろんな失敗も経験して、そうやって大人になって行くんだって。でも、そのとき、常にそのときの自分を好きでいなさいっていうふうに教えられたんですね。
久米:5歳の女の子が、全裸で鏡の前に立って、自分の体が好きって思うかなあ。
葉月:思いましたし、鏡の自分によく話しかけてましたよ。
久米:うーん、小学校に上がる前に、裸の女の子が全身を映して、好きだと思ったり、話しかけたりしてるのを見たら、やっぱり女は怖いと、男は思うかもしれないなあ。
葉月:そうですねえ(笑)。
久米:男は、そんなことするかなあ。する人いるのかなあ、最近は。
葉月:どうなんでしょうね。男って、まったく違う生き物だと思ってるんですよ、私。
久米:そんなことないよ。ぼくは、ほとんど同じだと思いますけどね。】
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これは、1997年に行われたインタビューです。久米さんは「ニュースステーション」を引退され、葉月さんは…どうしているんでしょうねえ…… まあ、それはさておき、このセクハラすれすれのインタビューを読みながら、僕は、女性の「自分の体へのこだわり」について、あらためて考えさせられました。そんな小さい頃から、自分の体を鏡に映して「鑑賞」するなんて、なんだかもう「えっ?」という感じです。女優になろうというくらいの人だからこそ、なのかもしれませんが… 少なくとも僕は、そんな気分になったことは一度もないのですけど。 もちろん、男だって「美しい肉体」のほうがいいに決まっているし、僕だって自分の顔や体に対する不満は腐るほどありますが、そういうのって、「見ないようにすれば、なんとかなる」のが男性であり、「どうしても見ずにはいられない」のが女性だということなのかもしれません。 最近、テレビなどで「整形手術を受ける女性」が取り上げられることが非常に多くなっているような気がするのですが、こういう話を聞くと、葉月さんのように「自分の体を好きになれる」人はいいのでしょうが、「どうしても自分の体を好きになれない」という人にとっては、そういう体を抱えて生きていくというのは、とても辛いことなのですよね。いや、葉月さんもここで「胸がない」というコンプレックスを話されていますし、こういうものに「100%満足」なんて、ありえないとしても。 その痛みで心が歪んでしまうくらいなら、整形したほうが良い場合だって、あるのかもしれません。
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