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2005年12月02日(金)
三浦和良選手が、「サッカーはこれだ、W杯だ」と思った瞬間

日刊スポーツでの荻島弘一さんと「カズ」こと三浦和良選手(現・シドニーFC)との対談記事「W-VOICE」より。

【荻島:来年はW杯の年。今やW杯はすっかり日本サッカーに定着したけれど、最初に日本の選手でW杯を目標として口にしたのはカズでしたよね。

カズ:86年にキリン杯で来た時や、90年に読売クラブ(現東京ヴェルディ)移籍で帰ってきたとき、はっきりとW杯に出たいと思っていた。やっぱり、ブラジルにいたことが大きい。向こうで86年と90年の2回、W杯を体験したけれど、それはすごかった。ブラジル全体が盛り上がるの。でも、そこに日本は出ていない。寂しかったし、自分の存在が否定されているように思ったよ」。

荻島:やっぱり、ブラジルはW杯期間中は大騒ぎになるの?

カズ:試合時間に合わせてクラブの練習時間は変わるし、店は閉まる。銀行まで休みになっちゃうし、ゴールが入ると、花火が上がったりもする。仲の良かった女の子が、ブラジルが負けたときに泣くんだよ。サッカー好きなら分かるけど、普段はまったくサッカーに興味もなかった子がね。その時「サッカーはこれだ、W杯だ」って思った。】

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 38歳にしてシドニーFCに移籍し、先日2ゴールを挙げる活躍をみせた、「キング・カズ」こと三浦和良選手が語る、ワールドカップの凄さ。
 僕が「サッカー」というスポーツに興味を持ったのは、あの「キャプテン翼」の影響が大きかったような気がします。というか、少なくともJリーグ発足までは、それがすべてだったのかもしれません。実際にサッカーの試合のテレビ中継を観ても、オーバーヘッドキックもドライブシュートも出てこないので、ちょっと退屈な気分ではありました。
 それにしても、日本初のプロサッカーリーグであるJリーグが開幕してからわずか12年だというのに、「サッカー」というスポーツは、本当に日本に浸透していますよね。長年のサッカーフリークのなかには、「代表戦しか観ないようなヤツらは、真のサッカーファンじゃない!」と言う人もけっこう多いけれど、「代表戦では、日本国民の2人に1人くらいが、同じサッカーの試合を観ている」というのは、ものすごいことだと思うのです。
 そして、このサッカーというスポーツの人気の基盤にあるのが、この「ワールドカップ」。
 僕も、「代表戦しか観ないような怠惰なサッカーファン」なのですが、それでも、「ドーハの悲劇」も「ジョホールバルの歓喜」もリアルタイムで(もちろんテレビですが)観ていました。しかし、日本人の若者がこんなに喜々として「君が代」を歌い、日の丸を振るなんて、ある意味、すごいカルチャーショックではあるのです。そういう意味では、「スポーツによる国威発揚」というのは、けっして、旧共産国家だけの話ではないようです。
 それにしても、この三浦和良選手が「ワールドカップの凄さを知ったエピソード」、僕はけっこう面白いなあ、と思いました。店が閉まることや花火が上がることよりも、【仲の良かった女の子が、ブラジルが負けたときに泣くんだよ。サッカー好きなら分かるけど、普段はまったくサッカーに興味もなかった子がね。】というのは、ものすごく実感がこもっているような気がしたのです。「ツンデレ」じゃないけれど、そういう、日頃サッカーファンじゃない人も涙を流さずにはいられないような「ワールドカップ」というものの大きさを、三浦選手は痛感したに違いありません。それは、「ブラジル人としての血」みたいなものだったのでしょうか?
 確かに、「日頃興味がなかった人でも、負けたら涙を流すようなスポーツ」っていうのは、「ワールドカップ」が日本の手に届くところに来るまでは日本にはなかったし、たぶん、これからも「ワールドカップ」以外にはないでしょう。まあ、このブラジルの女の子の涙と、日本人のにわかサポーターが流す涙は、同じ涙でも、けっこう「重み」が違うような気もするのですけれど。