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2005年11月13日(日)
「生協の白石さん」のゆくえ

ITmediaニュースの記事より。

【「お騒がせしてすみません」「お待たせして申し訳ありません」――生協の白石さんは、心から恐縮した様子でこんな言葉を繰り返した。
 11月12日、東京農工大学の学園祭で「生協の白石さん」サイン会が行われ、整理券配布前から100人近くが列を作った。同書の著者で農工大生協の職員・白石昌則さんは、サインを求める1人1人に声をかけながら、「ひとことカード」に「ありがとうございました」などと書き入れた。
 「生協の白石さん」は、農工大生協のアンケート用紙「ひとことカード」の内容をまとめた本。その絶妙な受け答えがネット上で話題になり、11月2日に書籍化された。Amazonの売り上げランキングは常に1位。ネット書店だけでなく実店舗でも売れ、紀伊国屋書店でもランキング1位に。テレビや雑誌、新聞でも続々紹介されている。
 当の白石さんはこの状況に「お騒がせして申し訳ない」とひたすら恐縮する。サイン会でも1人1人に「お待ちいただいてすみません」「どちらからいらっしゃったんですか? 遠くから来ていただいてありがとうございます」「(もっとかっこいい人を想像していただろうに)がっかりさせちゃってすみません」などと話し、「学園祭をぜひ楽しんでください」と声をかけていた。
 サインを求めて並んだのは、在校生や在校生の母親、卒業生、近所に住む親子連れ、白石さん人気をネットで知ったIT企業の社員など実にさまざま。白石さんに「大変そうですががんばってください」「いつも楽しみにしています」などと話しかけ、プレゼントを渡す人もいた。
 前日からたっぷり眠ってサイン会に備えていたという白石さんは、サイン会終了後、「みなさん『大変ですね』などと言ってくださって、気を遣っていだたいているのが痛いほど分かりました。風も強くなってきて肌寒いのに、ずっと待っていただいて申し訳なかったです。学園祭も楽しんでいただければと思います」などと丁寧にコメント。テレビのインタビューや新聞の取材に次々に応じていた。
 これまで顔を出していなかった白石さんは、「みなさんをがっかりさせるのが申し訳なくて」今回も顔出しNG。「外に出て何かを話すたびに、みなさんのイメージを崩してしまう」と恐縮していた。
 本が売れても私生活に特に変化はないという。しかしテレビなどで取り上げられるたび、ひとことカードに、生協の業務とは関係ない“ネタ”的な投稿が増えると少し困った様子だ。「あくまで生協への要望を伝える掲示板ですので、まじめな投稿をお待ちしています!」】

参考リンク:「がんばれ、生協の白石さん!」

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 書籍化された「白石さん」ですが、本のほうもすごく売れているみたいです。個人的には、この本の印税はどうなるんだろう?とかいう下世話な興味もあるんですけど。
 僕がはじめてこのサイトを読んだときの印象では、白石さんは「村上春樹フリークの30歳くらいの女性」なのではないかと予想していたのですが、実際は男性だったので、ちょっと意外でした。それにしても、この「白石さん」の魅力というのは、「たぶん質問者意外のほとんどの人が真面目に読んでいないはずの『ひとことカード』に、大マジメに機知を利かせた答えを返している」という点にあると思われるので、正直、こんなふうに大きな話題になってしまうと、質問する側も答える白石さんも「カードの向こうの大勢の人」をイメージしてしまって、本来の味が無くなってしまうのではないかという気もします。もっとも、こういうやりとりそのものが、そもそも「一瞬の輝き」みたいなもので、それをうまくWEBで世界に広めたという意味では、ものすごく意味のあることなのかもしれませんが。
 一躍「時の人」になってしまい【これまで顔を出していなかった白石さんは、「みなさんをがっかりさせるのが申し訳なくて」今回も顔出しNG。「外に出て何かを話すたびに、みなさんのイメージを崩してしまう」と恐縮していた。】というのもよくわかります。いままでは、生協の「閉じた世界」でのやりとりだから気楽に、自由に書けていたのに、こんなふうに一挙手一投足に注目が集まってしまっては、プレッシャーもかかりますしね。それに、周りの職員の目も、けっして温かいものばかりではないでしょうし。
 まあ、これを期に、ああいう「お客様の声」への対応が、紋切り型のものばかりではなくなっていくのは間違いないでしょうし、そういう地味な仕事にスポットライトが当たったという点では、非常に有意義な面もあるのだと思います。僕もときどき某ジャスコなどに貼ってある「お客様の声」などを読むのですが、なかにはかなりお客側からの「言いがかり」的なものもあって、「担当者もかわいそうだな…」と思ったりもするんですよね。「生協の白石さん」だって、「マジメにやれ!」というクレームがついていたら、もしかしたら、あっというまに「改善」されていたのかもしれません。そういう意味では、平和な学校、理解のある職場だからこそ、許容された「遊び」なのかも。
 おそらく、これから全国に「白石さんのような」回等者が続出してくることが予想されますが、こういうのって、二番煎じに対する世間の評価は、ものすごく厳しいからなあ…