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2005年11月12日(土)
あなたにとって「理想の旅」とは?

「またたび」(さくらももこ著・新潮文庫)より。

(巻末の「おまけのQ&A」での、さくらさんへの質問の1つ)

【さくらさんが「旅」を好きだなあ、と思うときはどんなときですか。さくらさんにとって、理想の旅―場所、交通手段、道連れ、出会いetc.etc.―は、どんな旅でしょうか。

さくら:やっぱり、おいしい物を食べた時が一番「旅っていいなア」と思っていると思います。理想の旅は、気の合う仲間と、スケジュールも決まってない、呑気な旅がいいです。適当に散歩したりカフェで休んだり、街の様子を見るのが好きなんです。あと、ホテルは良いホテルじゃないと、やだなアと思います。わがままですよね。わかっているんです……】

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 あなたにとって、「理想の旅」とは?
 もともと出不精の僕は、「旅」というのがけっこう苦手だったのです。計画をする時点で、頭の中でいろいろと考えているうちは愉しくてしかたがないのですが、実際に旅に出てみると、乗り物に長い間閉じ込められたり、あんまり口に合わないものを食べさせられたり。家にいれば、眠くなったら寝ればいいけれど、旅先では、少なくとも「眠れる場所」まで移動しなければならないし。
 でも、実際に旅に出てみると、持ち前の貧乏性で、「もう二度とここには来ないかもしれないから、観られる名所・旧跡は全制覇しなくては!」という強迫観念めいた考えにとらわれてしまって、過密スケジュールを組み、かえって自分を苦しめたりするわけです。「せっかくここまで来たんだから、何もしないのはもったいない!」とか。「現地の人との、心あたたまるふれあい」とかに対しては、怖さのほうが先に立ってしまうし。近づいてくる人は、まずスリじゃないかと。そもそも、「のんびりするための旅行」っていうのは、近くの温泉とかならともかくねえ。
 なんだか、そういう自分を顧みてみると、いかにも「日本人観光客ってやつは…」と海外通の人に後ろ指をさされるような「典型的な日本人観光客」なので、また自己嫌悪に陥ってしまいます。そもそも、海外では、土産物屋や免税店でも、自分ひとりで取り残されると、ものすごく不安になってしまうんですよねえ。
 それと、旅先で「おいしいもの」って、なかなか旅先ではめぐり合えないような気がするんですよね。ただそれは、僕がガイドブックとかに頼った旅行しかしていないからで、現地に留学している人に教えてもらった店は本当においしくて「地元で生活している人が薦める店」には、確かに、おいしい店があるのだなあ、と痛感したこともありましたが。
 僕にとっての「理想の旅」というのは、とりあえず、「珍しいものや綺麗なものが観られて、食事が不味くはなくて、単独行動しなくていいけれども、あんまりベタベタと集団行動を強要されるわけでもなく、寝るところが清潔で、スケジュールが決まっているけれども時間的な余裕はそれなりにある」という感じです。って、こうして書いてみると、贅沢言わないつもりがけっこうワガママかな、と、あらためて実感。旅というのは、特別な時間のようで、かえって、その人の「日常の好み」っていうのが反映されるみたいです。
 「その人を知るためには、一緒に旅行をしてみればいい」と言うのは、確かに当たっているのかもしれませんね。