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2005年11月14日(月) ■ |
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「ウイダー in ゼリー」に隠されたテクノロジー |
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「GetNavi(ゲットナビ)」2005年12月号(学習研究社)の記事「名品誕生vol.9 ウイダー in ゼリー」より。
(大ヒットゼリー状飲料・ウイダー in ゼリーに関する、森永製菓食品事業本部・食品マーケティング部の松崎勲さんへのインタビューの一部です。)
【米国では純粋に飲料だったものを、森永製菓はゼリー状という付加価値を付け、世に発信したのである。ウイダー in ゼリーのブランドマネージャーの松崎勲さんは語る。
「ゼリー状にすることを思い立ったのは、あるスケート選手からのリクエストがきっかけでした。その内容は腹持ちがし、トレーニング前に摂取してもお腹がだぼつかず、さらに食べた感覚が得られること。 この三つの条件を満たす商品を考えたとき、我々が行き着いた結論がゼリーでした。飲料は水分でお腹がだぼつきますが、ゼリー状ならその問題もなく、腹持ちもし、また食べた感覚も与えてくれると考えたんです」
「飲むゼリー」を展開していた同社は、ゼリーについてのノウハウは持っていたものの、ウイダー in ゼリーの開発にあたり、ゼリーのゲル状の安定化が課題であると判断した。
「四季を通してゼリーの状態を均一に保つのは、実はとても難しいんですよ。どのような努力をしたかに興味を持たれると思いますが、それは企業秘密です。残念ながらお話することはできません(笑)」
それでは味についてはどのような考えをもっているのだろうか。
「エネルギーやビタミンを補給するのが目的の飲料といっても、味についてもこだわりがあります。それは毎日摂取しても飽きないこと。そのためユーザーの嗜好については入念なリサーチを行っています。 最近はアルコールも含め、キレが求められる傾向にあります。カロリーをある程度確保するためには糖質を増やすことは不可欠。しかし甘すぎると消費者は飽きてしまうんです。そこで糖化メーカーと共同で、適量のカロリーが摂れる甘すぎない糖質を開発。これにより後味をすっきりさせることに成功しました。また来春のリニューアルでは、果汁感をより際立たせることを考えています」
絶えず改良を重ねてきた結果、当初ターゲットに据えていたアスリートはもちろん、一般消費者にもウイダー in ゼリーは浸透している。
「飲料を飲む場合、顔を上に向けないとうまく飲めないですよね。でもウイダー in ゼリーは、ゼリー状のため口をちょっとすぼめて吸い込むだけで正面を向いたまま摂れます。危ないのでおすすめはできないんですが、走りながら飲むことも可能。時間のないときにすぐ摂取できる。これが愛されている理由のひとつだと思います」】
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「ウイダー in ゼリー」が最初に発売されたのは、1994年、いまから10年以上も前のことです。考えてみれば、清涼飲料水業界というのは、非常に入れ替わりが激しいわりには定着するのは難しいようで、この10年間に新しく「定番」となった商品は、ごくわずかなのではないでしょうか。お菓子業界でも、同じことが言えるようなのですが(参考:暴君ハバネロの話)。 それにしても、あの「ウイダー in ゼリー」1パックの中には、これだけの研究の成果とテクノロジーが詰め込まれているのです。いつも同じようなゼリー状なのが当たり前だと思っていたけれど、確かに、日本のように四季がある国では、夏でも冬でも同じようなゼリー状の形を保つというのは、けっして簡単なことではないですよね。あの味も、「飽きないように」ということで、味の加減だけではなく、糖質そのものまで新しく開発されていたとは。しかしながら、おそらく、同じように精魂こめて開発されてきたはずなのに、実際に店頭に並んではすぐ消えてしまう「新製品」が多いというのも、またひとつの現実なのです。消費する側としては、「これ、ほんとうに発売前に誰か飲んだの?」と言いたくなるような「独創性がありすぎる商品」なんていうのも、けっこう多いんですけどねえ。そんな画期的なものでなくても、「新しいコカ・コーラ」だけでも、さて、この10年間に何種類出たことか… まあ、アスリートには程遠い僕としては、「走りながらまで、わざわざ飲みたくない」とは思うんですけど、そこまでできるようにするっていうのは、それはそれで凄いですよね。
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