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2005年10月17日(月)
山下達郎「バンドは無理」な理由

「Quick Japan/Vol.62」(太田出版)の「総力特集・山下達郎」より、山下達郎さんと山口隆さん(サンボマスター)の対談の一部です。

(山下達郎さんと山口隆さんの初対談。2人の以下のやりとりの前には、山下さんから、「サンボマスターって、すっごい不思議なバンドだと思うのは、あのコード・プログレッションだったら、なんでキーボード入れないの?」という質問があって、それに対して山口さんは現在のメンバー構成へのこだわりを話し、「僕はメンバーと一緒に、三人で売れなくなりたい」と答えています。)

【山下:バンド志向なんだね。僕はバンドで一度挫折した人間だから、二度とバンドは作らない。シュガー・ベイブは僕のワンマン・バンドだったから。

山口:僕がやりたいことを伝えると、みんなやってくれるんですよ。

山下:それはあなたの人徳(笑)。メンバーとヴァイブレーションが合ってるの。

山口:そうかなぁ。達郎さん、合う人いませんでした?

山下:いなかった。今でも音楽的に100%合う人は、正直言っていない。

山口:それは音楽家にとって不幸ですね。

山下:不幸ですけど、それは、僕の趣味の範囲が広すぎるとか、ライヴでも要求度が高いとか、色々ありますので。リハーサルやって、翌日一曲一曲全部チェックしたレポート用紙を10枚くらい持って、バックのメンバーに対して「あの曲の三小節目のあの音はいらない、キーボードのあそこはとんがってるから低く」みたいな要求をするから。

山口:そりゃバンドは無理です(笑)。】

〜〜〜〜〜〜〜

 これを最初に読んだときは、達郎さんの冗談なんじゃないかと思ったのですが、何度読み返しても、達郎さんにも山口さんにも編集部の人にも、「冗談らしい雰囲気」はありません。いやまあ、いかにも「音楽職人」山下達郎の面目躍如というお言葉なんですけど。
 達郎さんが先日発売した新作アルバム『SONORITE』(ソノリテ)は、オリジナル・アルバムとしては、7年ぶりの新作になるそうなのですが、達郎さんは、ライヴのステージがその人気に比して少ないことでも知られています。たまにコンサートツアーをやると、ファンクラブだけで完売、という状況なのだとか。確かに、ここまで毎回やっているのだとしたら、そうそう気軽にライヴなんてできないでしょう。
 それにしても、この「要求度の高さ」には、僕も読んでびっくりしました。こだわりの人だというイメージはあったものの、まさかここまでだとは!
 この御本人のコメントからすると、達郎さんは、リハーサルの段階で、一曲一曲どころか、一音一音のレベルで、きちんと「自分のイメージと同じ音なのかどうか?」をチェックしているということになります。それを翌日わざわざレポートにして持ってくるなんて、バックのメンバーとしてはたまらないですよね。彼らだって、プロのミュージシャンなんだし。まあ、達郎さんのその「こだわり」に応えてみせるのも、超一流レベルのバックミュージシャンたちの矜持なのかもしれませんけど。
 リスナーとしては、その「こだわり」が魅力的でも、一緒に仕事をする人にとっては、なかなか大変みたいです。
 「そりゃバンドは無理」だよなあ。