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2005年09月25日(日) ■ |
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千葉ロッテマリーンズ「バレンタイン革命」の真実 |
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「プロ野球チームをつくろう!3 公式コンプリートガイド」(エンターブレイン)より。
(千葉ロッテマリーンズ企画広報部長/荒木重雄さんへのインタビュー記事の一部です。)
【荒木「前の仕事(IT関係のビジネスマン)をしている時から、展示会等で千葉マリンスタジアムと同じ、海浜幕張駅にある幕張メッセには何度も足を運んだことはありました。が、そのすぐ裏のマリンスタジアムで熱い戦いが行われている空気は全く感じられませんでした。そこでまず、お客様にとって来ること自体が楽しい場所にしたいと考えました。昨年までの千葉マリンスタジアムは試合を観て、帰る、いわゆる典型的な”野球観戦場”でした。ただ野球を観るだけの。ボビー(バレンタイン監督)の言葉が象徴的だったんですが、彼はこう言うのです。”優勝チームですら、10回戦っても4回は負ける。プロ野球だけを商品にしたら、どうしてもそうなるんだ。だからそれ以外の部分で楽しめることを考えないといけない”と。まさに彼の言うとおりです。ただそのためにはどれだけ我々がエンタメというソフトを提供できるか。私は『滞留時間』と呼ぶのですが、いかにお客さんをスタジアムに長くいてもらえるようにするか。そうすることでビジネスの側面からも収益は確実に上がります」
(中略・「付加価値」としての5回の裏の300発の花火やチアリーディングチームの立ち上げなどの話題に続いて)
荒木「それとマリーンズの選手は、ファンサービスに対する意識はとても高いんです。じつはマリンスタジアムではヒーローインタビューが3回もあるんです。1回目はマスコミ向けに、2回目はライトスタンド前で。そして3回目はスタジアムの正面玄関の特設ステージで、スタジアムから帰る人たちに向けて行っているのです。何とスタジアム前に4000人ものファンに集まっていただいたこともあります。しかもこれは選手が自らの意思で行っていることで、我々が強要しているわけではありません。選手は自らファンサービスのために試合前にもサインに応じてくれますし、”ファンの皆さんのおかげで”という言葉が自然に出てきます」】
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ヒーローインタビューなら、何度受けてもいいものかもしれませんが、それでも、3度となると面倒なんじゃないかなあ。 それにしても、今年の千葉ロッテマリーンズの躍進ぶりは、とくにロッテというチームに興味がなかった僕にとっても、非常に印象的でした。それこそ昔は「お荷物」と呼ばれて、「ビールを飲むために川崎球場へ行っていた」という観客も少なくなかった、そんなチームだったのに。 この話の中で、僕が驚いたことのひとつは、ボビー・バレンタイン監督の【優勝チームですら、10回戦っても4回は負ける。プロ野球だけを商品にしたら、どうしてもそうなるんだ。だからそれ以外の部分で楽しめることを考えないといけない】という発言でした。日本の監督なら「10回戦って、10回勝つつもりで」というように、少なくとも表面上は言うはずです。でも、バレンタイン監督は、「どんなに強いチームでも負けるのが野球というものだ」と公言していて、だからこそ、チームの勝敗以外のところでも、ファンサービスをしていくことが必要なのだ、と主張しています。「一監督」が、球団の経営姿勢について、ここまで言えること自体が、驚きなのですけど。 贔屓チームのみじめな負け試合ばかりを見せられて苛立っている僕としては、「いや、6割とは言わないから、5割くらいは勝ってくれないと…」と思ったのですが、いずれにしても、贔屓チームの勝利だけを期待して野球観戦をするというのは、「野球、あるいは野球観戦を楽しむ」という点からいえば、非常にもったいないことなのかもしれません。なんでもアメリカナイズされるのが良いわけではないのでしょうが、もっと純粋に「野球そのもの、あるいはスタジアムの雰囲気を楽しむ」という姿勢があってもいいのかな、という気もするのです。 もちろん、真剣勝負だから面白いのは間違いないのですが、その一方で、過剰に「自分のチームが勝つ」ことにばかりこだわる野球の観かたというのは、もう、流行らなくなっていくのではないかなあ。
最近の千葉ロッテ・マリーンズは、ファンの熱心さとマナーの良さで知られるようになってきています。選手たちも、不人気球団だったからこそ、ファンを大切にする気持ちが一層強いようです。 かつての「お荷物球団」は、選手とファンのお互いの努力と、それをつなぐ荒木さんのような人によって、変わりつつあります。 球団のオーナーがお金をかけて、自分のチームを強くすることだけが、「ファンサービス」だという時代は、もう、終わりなのかもしれません。
いや、もう終わりにしてほしいよまったく……
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