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2005年09月03日(土) ■ |
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ある東証一部メーカーの「経営改革残酷物語」 |
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「週間SPA!2005.8/16,23号」(扶桑社)の記事「これが我が社の大失敗プロジェクトだ!」より。
(東証一部メーカーDの社員・米山幸二さん(仮名)の告白「コンサルの言いなりになった社長が招いた悲劇」)
【想像してみてください。販売の90%を代理店に頼っていた会社が、いきなり代理店を飛ばして直販に切り替える。そんなの無理に決まってますよね。でも、ウチの会社は実際それをやっちゃったんですから、笑っちゃいます。 キッカケは社長が、ある経営コンサルタントの営業セミナーに出席したことです。ここでリクルートの営業手法などを聞きかじったらしく、「ウチの営業もリクルート流にする」なんてかぶれたんです。 そこで、この経営コンサルタントが率いる外資コンサル会社に「営業革新プロジェクト」を依頼。そもそも、このセミナー自体が、ヤツらの「営業」なのに、まんまと引っかかっちゃったんですね(笑)。 数日後、3〜4人のコンサルたちがウチに乗り込んできました。彼らは「代理店依存はリスキーだ」とブチ上げたのです。こんな意見、現場を無視していますよ。私ら社員には、長年代理店に製品を売ってもらってきた「恩」があるんですよ。案の定、噂を聞きつけた代理店からのクレームが殺到。でもコンサルたちは、「もう決まったことだから実行するように」と涼しい顔。まるで「私たち考える人、あなたたち手を動かす人」といわんばかりでした。でも、ヤツらの思い通りにはいきませんでした。 長年代理店頼みだったウチの営業マンに営業力があるはずもなく、受注は凍結。あげく、怒った代理店が、腹いせに競合の製品を営業しだして、売り上げは激減。結局ン十億もの損失が出ました。 なのに、コンサル連中ときたら、「膿を出すには痛みが伴うものです」なんて言っているんですよ。ホント、コンサルほど信用できない連中はいませんね。】
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まあ、いわゆる「経営コンサルタント」という人たちの全部が、こんな感じではないとは思うのですが、こういう「経営改革残酷物語」みたいなことが、たぶん、日本中で起こっていて、コンサルト会社は、「言ったとおりにできない御社に問題がある」とか言って、高いコンサルト料をせしめているのではないでしょうか。確かに、彼らの思い通りにできれば、理論上は利益が上がるのかもしれませんが、やっぱり、現場には「しがらみ」とか「今までの積み重ね」みたいなものもありますしね。そういう人間の感情の機微を考慮に入れていないような「経営改革」なんて、まさに「机上の空論」でしかありません。そしてまた、「正しいこと」が、必ずしも「受け入れやすいこと」ではないですし、この場合などは、代理店にとってはまさに死活問題であり、そう簡単に「そうですか」というわけにはいかないでしょう。 そういう「現場の声」にこだわりすぎていると、全然「改革」できなくなってしまうのも事実なんですけが、この例はあまりにも、極端にすぎますよね。結局、辛い思いをするのは代理店と現場の営業マンなのに、経営コンサルタントは涼しい顔。 もちろん、正しい理論を立てる人が、かならずしも優れた実践者というわけではないでしょうし、それを望むのは、ちょっと酷な話ではあるんですけど、やっぱり当事者の感情としては、「あいつらは自分では何もしないくせに!」という話になってしまいます。そして、理論の誤りよりも、そういう感情的な軋轢というのが、歴史上しばしば「改革」を失敗させる要因になり、「改革者」たちを断頭台に送り込んでいったのです。 ただ、この手の「正しい経営改革」っていうのは、一企業の話としては、「どうしようもない失敗談」として物笑いの種と反省材料になるくらいのものですが、国レベルの「改革」でも、こういう話はたくさんありそうです。
「改革」というのは、本当に難しいもので、その成否のカギというのは、結局は「改革者」への周囲の「思い入れ」に尽きるのかもしれません。 「正しい」「間違っている」よりも「好き」「嫌い」のほうが、人間にとっては「自然な感情」なんですよね、きっと。
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