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2005年07月27日(水)
みんながやっている「本棚へのひどい仕打ち」

「本棚探偵の冒険」(喜国雅彦著・双葉文庫)より。

(喜国さんが「理想の本棚」を求めて新しい本棚(ガラス扉の付いたスライド式のヤツ、だそうです)を買ってはみたものの、なかなか満足できる本の収納ができず、悪戦苦闘されていたときの話)

【ならば、前後二列に置いてみるか?そこまでのスペースはない。四六版を出して大きいサイズの本を入れるか?持っていない。マンガ雑誌ならピッタリだが、なんだかなぁだ。小さいサイズの本を入れて一段増やすか?棚の数が足らない。簡単な解決策が一つあるのは知っていた。しかしそれはやりたくなかった。美しくないあの方法。世間の人が、みんなやっていながらやりたくないあの方法。最初はイヤイヤだったのが、これでいいのだと思い込んでいるあの方法。
「並べた本の上に横向きに突っ込む」だ。
 なんて美しくないんだろう。背表紙の文字が見づらくて気持ち悪い。綺麗な横向きならともかく、本のサイズは微妙に違うから斜めになってて気持ち悪い。下の本が出しにくくて気持ち悪い。オヤジのワイシャツが汗で背中にくっついているぐらい気持ちが悪い。これは僕の性格に因るのだろうけど、人生でこれだけはやったことがなかった。だからショックだった。せっかく買った憧れの本棚にこんな仕打ちをするなんて……。】

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 ああ、耳に痛い話です。ほんとうに本を「愛している」人というのは、こんなふうに並べ方にまでこだわるものなのか、と。僕などは、読み終えた本をそこらへんに転がしていたり、ましてや、「本棚に横向きにならべる」なんて、日常茶飯事なのに。
 いや、確かにあれは、見栄えのいいものじゃないし、傍からみれば、いかにも「本を整理するのがめんどくさくて、空いてるスペースに突っ込んでる」ように見えますよね。考えてみれば、書店でも本というのは、基本的に「縦置き」にされるのが大前提で、本が横向きに置かれているのって、雑誌か「平積み」になっている売れ筋の本だけですし。やっぱり、あの「横置き」というのは、禁忌なんだなあ…
 「本の並べ方」というのは、ものすごく性格が反映されるもののようです。僕が前に仕事をしていた研究室では、それこそ、「本の高さまで、キチンと並べていないと気がすまない人」というのがいる一方で、僕のように、「とりあえず手狭になったら、そこらへんにある本を本棚に投げ込んでおく人」というのもいたのです。そして、大概において、前者は几帳面で仕事が手堅く、後者は大雑把でおおらかだけど細かいところが抜けがち、という傾向があったんですよね。訪問者に隣の几帳面な人と僕の本棚を見比べられて、「やっぱりお前の机だなあ」と溜息まじりに言われるというのは、なんとなく気まずいものではありました。
 たぶん「本好き」にもいろんなタイプがあって、「読めればいい」と言う人もいれば、「本の機能美が好き」という人もいるのだろうし、「本棚にキチンと並んでこそ本」という人もいるのでしょう。「マニアは、自分で読む用と『保存用』の2冊ずつ本を買う」なんていう通説があることを考えると、それらの要素を併せ持っている人も多いのでしょうね。
 しかし、【人生でこれだけはやったことがなかった】と断言できる喜国さんは、本当に凄いよなあ…その事実もそうだけど、それを記憶しているくらい、本の並べ方にずっとこだわってきたなんて。
 正直、比べられたら恥ずかしいので、あんまり自分の隣の机に来てほしくないタイプの人のような気もしますけど。