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2005年05月12日(木)
「薄毛は子孫も迷惑です」/「バカ広告は、現時点で大迷惑です」

毎日新聞の記事より。

【大手化粧品メーカーの資生堂(本社・東京)が先月ホームページに掲載した意識調査で、「薄毛は子孫も迷惑です」などと記載したことに対して、130件以上の抗議が寄せられていることがわかった。同社はページを削除しておわびした。
 問題となったのはホームページの「薄毛レポート」というコーナー。同社によると、新しい発毛促進剤「薬用アデノゲン」の発売に向け、昨年12月に30〜59歳の男性1550人にネット上で意識調査をした。制作会社がまとめ、4月21日にホームページに掲載した。
 「あなたの親族の中に薄毛はいますか?」の質問については、父親(55%)、母方の祖父(28%)、父方の祖父(23%)のグラフとともに、「薄毛はあなた一人の問題ではありません。子孫も迷惑です」とのタイトルを掲載した。
 薄毛の悩みの有無を役職別にまとめたページのタイトルは「薄毛の人は部長止まり?」。薄毛に悩んでいないのは、役員では81%なのに対し、一般社員(76%)、派遣社員(74%)との調査結果を根拠に、「部長、課長、係長に薄毛の悩みが多いのに対し……偉くなるのは薄毛ではない人のようです」と説明した。
 同社には「好きで薄毛なわけでない」「薄毛で子孫に迷惑とは、どういう意味か」などの抗議が電話やメールで寄せられたため、1週間後にページを削除。商品紹介のページで「大変不愉快な思いをさせてしまった」とおわびした。
 しかし抗議は続き、今月になって1日十数件に増えたため、同社は6日、ホームページの表紙に、おわびの文章を掲載した。
 この発毛促進剤をめぐっては発売直後の4月、テレビCMが美術家の横尾忠則氏の作品と類似しているとの指摘を受け、放映をやめたトラブルも起きている。
 同社広報部は「今後このようなことがないよう、社内チェック体制と倫理意識向上を徹底します」と話している。】

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 「薄毛はあなた一人の問題ではありません。子孫も迷惑です」というのは、なかなか凄いコピーですね。僕が薄毛だったら、「ああ、自分は子孫にまで迷惑をかけるのか…」と激しくショックを受けて、この「新しい発毛促進剤『薬用アデノゲン』」とやらを買いに走るかもしれません。
 なんのかんの言っても、広告というのはインパクトが大事だし、それで気を悪くする人がいたとしても、誰の目にもとまらないよりは、はるかに有意義なことですしね。

 でも、この広告、実は、根本的に間違っているというか、何が言いたいのかさっぱりわからないような内容なのです。あえて言うならば、単なる「薄毛の人への嫌がらせ」としか考えようがない。
 なぜかというと、この調査は、「薄毛の人は、祖先に薄毛の人がいる可能性が高い」という結果のようなのですが、では、この広告を見た人が、「子孫を薄毛にしないために」発毛促進剤を使ったところで、その子孫の「薄毛になりやすさ」が変わると思いますか?
 薄毛に遺伝的な要因があるのは事実ですが、実際は、本人がいくら発毛促進剤を使ったところで、「薄毛になりやすい遺伝子」にまで影響を与えるはずがないのです。「整形で変えた顔は遺伝しない」のと同じなんですよね。
 だから、「迷惑」だとか言われたところで、自分自身に関してはともかく、子孫に対しては、「どうしようもない」ことです。そして、この広告は、その「どうしようもない」ことを、あたかも発毛促進剤で改善できるように書いているのです。
 これって、遺伝的な要因のある癌の患者さんに「あなたの癌は、子孫に迷惑です」と言っているのと同じこと。
 子孫のことを考えるならば、「薬用アデノゲン」よりも、薄毛になりにくい食生活や生活習慣、などを伝承していったほうが、よっぽど有意義なのに。

 確かに、「目立つ」というのが、広告にとって重要なファクターだというのはわかります。でも、こういう「どうしようもないこと」を脅迫めいた内容で書くというのは、企業としてあまりに非常識だとしか言いようがありません。
 資生堂さん、インパクトを与えることだけを重視して、悩んでいる人への気遣いもなければ、真実でもない広告をホームページに堂々と載せる企業のほうが、薄毛よりはるかに「子孫に迷惑」じゃないですか?