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2005年03月10日(木)
「住民基本台帳」は、犯罪者と名簿業者の味方です。

時事通信の記事より。

【今年1月に名古屋市内で女子中学生に暴行したとして、愛知県警捜査1課と西署などは9日、強制わいせつの疑いで、同県春日井市味美白山町、無職武藤誠容疑者(31)=別の強姦致傷罪で起訴済み=を再逮捕した。同容疑者は「区役所の住民基本台帳を閲覧し、女の子がいる母子家庭を狙った」などと供述しているという。
 調べによると、武藤容疑者は住民基本台帳を閲覧して家族構成を確認。小学生や中学生の女子がいる母子家庭などに狙いを定めた上で、名古屋市内の女子中学生の自宅を訪問。応対に出た女子中学生を玄関先で殴って脅した上、暴行を加えた疑い。】


以下は、読売新聞の3月7日の記事です。

【大阪市など大阪府内7市3町が、名簿業者に住民基本台帳の閲覧を認めていることが7日、わかった。
 住民基本台帳法は原則、「何人も閲覧できる」と規定しているが、4月1日全面施行の個人情報保護法は、本人の同意を得ない個人情報の第三者への提供を禁じており、名簿業者が閲覧した個人情報を販売した場合、同法違反の疑いがある。
 一方、熊本市は昨年8月、営利目的の閲覧禁止を全国に先駆けて条例化した。二つの法のはざまで、自治体の判断が揺れている。
 他に閲覧を認めているのは岸和田市などで、閲覧できるのは名前、住所、生年月日、性別の4情報。
 1985年の住民基本台帳法改正で、不当な目的に使用されると市町村長が判断した場合、閲覧を拒否できるとの条文が盛り込まれ、東大阪、高槻など府内10市は、これを根拠に名簿・ダイレクトメール(DM)業者を含む営利目的の閲覧を禁止している。
 一方、大阪市以外の政令指定都市12市は、DM業者に閲覧を認めているが、名簿業者には認めていない。営利目的の閲覧禁止を条例化した熊本市は「個人情報が流出すれば架空請求などに悪用される恐れがある」という。
 総務省市町村課は読売新聞の取材に「住民基本台帳は市場・世論調査、学術研究、弁護士調査などに利用されており、公開する役割はある」と説明。自治体独自の規制について「最終的には市町村長の判断」としている。】

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 現在の「住民基本台帳法」というのは昭和40年代に制定されたもので、1985年に改正が行われたものの(この「改正」でさえ、【不当な目的に使用されると市町村長が判断した場合、閲覧を拒否できるとの条文が盛り込まれ】ですから、「閲覧自由」というのが、ずっと基本になっていたわけです。でも、今回の暴行事件では、その住民台帳が、「日中に女の子がひとりだけになる家庭を見つけるため」に、まさに「悪用」されてしまったわけですから、「名前や住所や生年月日や性別」だけとはいうものの、「こんなものを誰でも閲覧できるようにする必要があるのか?」という疑問は否めません。現に、熊本市など、原則非公開にしている自治体もあるのです。
 そもそも、総務省は、【読売新聞の取材に「住民基本台帳は市場・世論調査、学術研究、弁護士調査などに利用されており、公開する役割はある」と説明している】そうなのですが、実際にこれの住民台帳を利用しているのは、ダイレクトメールなどの名簿業者が主だと思われます。DMなんて、嫌なら捨てればいい、と言われるかもしれませんが、そうやって自分の情報が垂れ流されていることに不快感や不安感を感じる人は少なくないでしょうし、そもそも、そういう調査とか研究なんていうのは、研究される側にとって、直接的なメリットがあるとは考え難いのです。「振り込め詐欺」のターゲットになってしまう可能性だってあるわけだし。
 「長い目でみれば…なんていうけれど、それこそ、名前と住所と生年月日と性別だけで、何かまともな調査ができるのかどうかなんて、怪しいかぎり。どうして今まで、こんな「百害あって一利あるかどうか」というようなシステムが維持されてきたのか、甚だ疑問です。役所はダイレクトメール業者と癒着していたり、名簿の横流しとかしているんじゃないか?などと勘繰りたくもなってしまいます。だいたい、僕は今まで30年以上生きていますが、そんなものを見る必要性を感じたことなんて、一度もありません。誰のための台帳なのか、全然わからない。
 たぶん、この手の問題は、住民基本台帳法が制定された当時は、そんなにDMのシステムも発達していなかったでしょうから、「気にしなくてもいいこと」だったのかもしれませんが…
 テレビで観たのですが、1980年の時点での調査では、この住民基本台帳の公開について、「気になる」と答えた人は、約3%くらいだったそうです。ちなみに、最近の同じ調査では、40%くらいの人が不安を感じているのだとか。確かに、そういう「個人情報」が、すぐに悪用されてしまうようなシステムというのが、社会の裏で発達してしまっているというのは、まちがいないでしょう。
 僕が子どものころって、電話番号は電話帳に載せるのが当たり前だったけれど、最近は、電話帳に載せないほうが当然、という感じにもなっていますし。

 確かに、「悪用するのは、一部の人々」なのかもしれませんし、「悪用するほうが悪い」のも間違いありません。でも、今の状況は、あまりに無責任すぎるのではないでしょうか。
 これだけ、「個人情報保護」が叫ばれているなかで、どうしてこのシステムがいまだに続いているのか、僕には正直理解できないんですよね。公開するメリットよりもデメリットのほうが大きいのならば、早くこんな制度はやめてもらいたい。
 犯罪者やDM業者のための役所なのか、それとも、住民のための役所なのか?
 本人しか見られないようにすることに、何か、不都合でもあるのでしょうか?