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2005年03月07日(月)
「どうしようもない事故」というのも存在するのか?

毎日新聞の記事より。

【高知県宿毛市の土佐くろしお鉄道宿毛駅に特急列車が衝突し、運転士(31)が死亡した事故で、運転席のアクセルがほぼ全開状態だったことが6日、分かった。ブレーキをかけるとアイドリング状態となって、動力が車輪に伝わらなくなる仕組みだが、ブレーキレバーも最も強い「非常」の位置でなく、弱くしか制動しない状態で残っていた。列車が自動列車停止装置(ATS)の作動でも停車できない程の速度で進入していることから、運転士に何らかの異変が生じて事故を回避できなかった可能性が出てきた。
 一方、運転士の遺体を詳しく調べたところ、腹部の負傷状況から、衝突時は運転席に座った状態だったとみられることも分かった。列車が直前に停車した平田駅では定時に出発していることから、その後で運転士に何らかの異変が生じ、運転席に座ったまま衝突した可能性があるという。
 調べなどによると、アクセルは切っている状態を含めて9段階に分かれ、ブレーキはゼロから「非常」まで10段階に分かれている。ハンドルを手前に向かって動かすとアクセルは加速し、反対にブレーキは奥の方に動かすと強く制動する。「非常」ブレーキをかけるとレバーが固定されるようになっている。県警などは、レバーの周辺部をほぼ原形のまま回収しており、事故の衝撃でレバーが動いた可能性も含めて慎重に捜査を進めている。
 また、宿毛駅の7駅手前の中村駅を列車が出発した後に、車掌が運転室に入ったが、運転士の異変を感じなかったと証言していることも判明した。】

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 実際に僕が体験したり、記録を調べたりした限りでも、「どうして起こったのかわからない交通事故」のうちの数%くらいには、「事故が起こる前に突然に運転者に起こったトラブル(不整脈や心筋梗塞、脳梗塞など)」が原因のことがあるようです。ただし、それは剖検などで調べてみても、「病気(あるいは病死)が先か、事故が先かというのは、今ひとつハッキリしないようなことも多いのですけど。
 例えば、急にセンターラインを踏み越えて対向車線に突っ込んできた車であるとか、見通しのいい道路のはずなのに、歩道にブレーキも踏まずに入ってくる車など、傍からみれば、「なんて酷い運転なんだ…」という事故の原因として、「事故が起こっている時点で、運転者がすでに突然死している」とか「急病で意識を失っている」というようなケースがあるのです。ここに書かれている情報だけではなんとも言えないのですが、この事故の場合も、全くブレーキを踏んだ形跡がないとのことですから、不整脈などによる突然死などの可能性も否定はできません。あるいは、睡眠時無呼吸症候群などの可能性もあるでしょう。
 こういう事例が起こるたびに、「乗務員の健康管理を」という話になるのですが、実際のところ、「ちょっと高血圧の薬を飲んでいるだけ」とか「日頃症状がない」というレベルの人に起こる、このような突然死に対して、どういう手の打ちようがあるのか?と問われると、「お手上げ」だとしか言いようがないように思われます。それはもう、「少しでも危険がある人」というのを全部除外できればいいのでしょうけど、そうしたら車に乗れる人の数は激減してしまうでしょうし、この事例のように「とくに何もなかった人」でも、突然死の可能性はあるのですから。
 もちろん、多くの乗客を運ぶような公共交通機関の場合には、運転者の乗務規定を厳しくするのは当然のことだとしても、リスクをゼロにするというのは、ほとんど不可能なのでしょう(本当は、運転者をふたりにすればいいのですが、それがコスト的に見合わない、という場合も多いだろうし、自家用車レベルではそうもいかないだろうし)。

 僕はこういう事例を目の当たりにするたびに、「世の中には、どうしようもない不幸」というのがあるのかな、と、つい考えてしまいます。突然死した人の車に巻き込まれて命を落とすなんて、それ以上の不運はなさそうな気もしますけど、だからといって、「突然死するな!」と言うのもまた理不尽なことではあるし。
 基本的に、車なんて危ないものなんですよね、きっと。
 あまりに便利で、あまりにそれで生活している人が多いから、誰も何も言わなくなってしまっているだけで。
 もちろん、自分が被害者になれば、「しょうがない」では済まないのもわかるのだけれど。