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2004年12月02日(木)
安倍なつみを「盗作」に奔らせたもの

サンケイスポーツの記事より。

【元モーニング娘。の歌手、安倍なつみ(23)がエッセー集やラジオなどで詩を盗作していたことが発覚し、来年1月末まで、大みそかのNHK「紅白歌合戦」などすべての芸能活動を自粛することが1日、所属事務所から発表された。紅白には後藤真希(19)、松浦亜弥(18)と3人で「後浦なつみ」として出演予定だったが、安倍抜きの後藤と松浦の2人のユニットとして出場することになった。
 盗作問題が発覚した安倍が来年1月末まで2カ間、活動を自粛することになった。この日、H.P.オールスターズの1人として生出演するはずだったフジテレビ系「FNS歌謡祭」でも、ハロプロリーダーの中澤裕子(31)が「安倍なつみがこのような問題で、心穏やかな状況になれないため、出演を自粛します」と語り、「ご迷惑をおかけしました」とハロプロ総勢45人で謝罪した。
 事の発端は、モー娘。時代の平成12年に発売した写真集「ナッチ」と15年のフォトエッセー集「ALBUM1988−2003」、今年発売した同「陽光(ひかり)」の書籍3冊と、MBSラジオ「ヤングタウン」で作詞した作品中に盗作があることが、11月下旬にインターネットの書き込みなどで発覚。
 先月30日に所属事務所も認め、aikoら盗用された作者に謝罪し、出版社に3冊の販売中止を申し入れた。安倍自身も「人の詩やフレーズに勝手に手を加えて発表してしまいました。軽率な行動で、本当に申し訳ありませんでした」と反省のコメントを出していた。
 この日はさらに状況が進み、「事態の重大さを考慮し、関係者に迷惑がかからないように」(所属事務所)との理由で、本人の2カ月間に及ぶ活動自粛にまで発展。注目の紅白歌合戦に対しても、同事務所がNHKに出場辞退を申し入れ、同局も了承。後藤と松浦を含めた3人組ユニット「後浦なつみ」として出演予定だったが、当日は後藤と松浦の2人で出場することになった。
 披露楽曲は後浦なつみのデビュー曲「恋愛戦隊シツレンジャー」が最有力だったが、安倍が抜けたことで同曲を歌うことが不可能になったため、後藤と松浦のソロ曲をメドレーで歌う可能性も出てきた。そのことに、NHK、所属事務所ともに「話し合いはこれからで、まったく白紙の状態」としている。
 いずれにせよ、7年間アイドル界を背負ってきた人気者が、年末年始にブラウン管から一切消えることになる。】

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 僕は昨日、中澤さんが「FNS歌謡祭」で謝罪している場面を観たのですが、正直言って、「同じ『ハロープロジェクト』のメンバーだからといって、謝らされている中澤ざんは内心イヤだろうなあ、と思いました。「安倍なつみがこのような問題で、心穏やかな状況になれないため、出演を自粛します」というコメントは、どちらかというと「反省している」というよりは、「周りに騒がれていて面倒なことになりそうなので」という印象も受けましたし。いくらなんでも、公共の電波や書籍で、aikoさんとかJUDY AND MARYとか小室哲哉さんみたいなメジャーどころを盗作すれば、すぐにバレそうなことくらいわかりそうなものなんですけどねえ…
 以前は、歴史小説の大家・司馬遼太郎の作品を「過剰引用」して作品が絶版になった作家もいたしなあ。そりゃバレるよ、だってあれだけマニアが多い司馬作品なのに…とあの時も思ったものでした。
 もちろん、マイナーな作品だったら盗用してもいいということはありませんが…

 それにしても、あらためて、人間の「プライド」というのは怖いものだなあ、と思います。ファンの人には怒られるかもしれませんが、実際問題として安倍さんの「詩の内容」に、ものすごく期待している人って、どのくらいいるのでしょうか。僕のイメージでは、「なっちが書いているのなら、なんでもいい!」と思っているファンのほうが多いような気がするのです。重要なのは、詩の「中身」よりも「誰が書いているか」ということ。たとえ安倍さんが「小学生の作文」みたいな詩を書いたとしても、文学フリークたちはさんざん馬鹿にするでしょうけど、それでも安倍さん自身への評価や作品の売れ行きは変わりないと思うのです。むしろ、「芸能人としての人気」のほうが「作品の出来」よりも重要なファクターなのですから。そもそも、今の日本で純粋に「詩人」として食べていけるのは、谷川俊太郎さんだけだ、なんて言われて久しい状況なんだし。
 それでも彼女が「盗作」してしまったのは、締め切りに追われて苦しかったり、ネタが出なかったり、ということもあるんでしょうけど、やっぱり「なっちの詩は上手い!」とみんなに褒めてほしかったからなのかもしれません。客観的にみると、「安倍なつみが書いた、という看板さえあれば、内容は二の次」でも、本人としては、そんなふうには割り切れなくて。
 だって、本当に見栄を捨ててしまえるのなら、ゴーストライターにでもなんでも外注すればよかったのだし(まさか、ゴーストライターがやったなんてことは…)。
 「盗作」というのは、創作者としては最も恥ずべきことだし、安倍さんが叩かれるのも致し方ないことだな、とも思います。いくらなんでも、「著作権」くらい知っているだろうし。とはいえ、こんなバレないはずがない盗作をやってしまう人間の「プライド」というのは、なんだかちょっと痛々しくも感じるのです。
 僕は最近つくづく思うのですが、大人というのは、「間違っていることを知らずにやる」ことよりも、「間違っていることを知っていながら、それでもやってしまう」ことのほうが、はるかに多いみたい。

 この問題に関して、「なっち、自分の好きな作品をちょっとした出来心で引用」みたいな、なんとなく腫れ物に触るほうな報道をしているマスコミには、さすがにちょっとなあ、とは思うんですけどね。被害者側のコメントとか、全然出てこないし。
 「稲垣メンバー」の件と言い、不自然に擁護しようとすればするほど笑い話になってしまうのは、もうわかっているはずなのにね。