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2004年11月23日(火)
「熱烈なファン」という名の免罪符の傲慢

日刊スポーツの記事より。

【NBAは19日のピストンズ−ペーサーズ戦で観客を巻き込んだ乱闘騒ぎを起こした両軍9選手に対して、厳重処分を科した。観客に暴行したロン・アーテスト(25=ペーサーズ)は今季の残り73試合すべてが出場停止になり、禁止薬物使用以外ではNBA史上最も重いペナルティー。9人で延べ143試合出場停止の大量処分で、主力を欠くペーサーズは厳しい戦いを強いられる。ピストンズもこの日のボブキャッツ戦に8人しか出場できず、第2延長の末の辛勝だった。
 プロスポーツを根幹から揺るがす暴行事件に対して、NBAは類のない厳重処分を下した。「新ロッドマン」と呼ばれる破天荒なアーテストはB・ウォーレスとの乱闘で騒動の発端になった。さらに観客に襲いかかる暴走は重罪と見なされた。20日のマジック戦を含め今季残り73試合の出場停止処分。薬物使用以外では97年に監督の首を絞めて68試合の停止になったスプリーウェル(ティンバーウルブズ)を上回るNBA史上最も重い処分だ。
 緊急会見でスターン・コミッショナーは、怒りと悲しみをにじませた。「NBAにかかわって21年になるが、最悪の事件。プロスポーツの手本にならなければならないのに、卑劣な行為だ」と選手に猛省を促した。NBAでは選手のマナー低下が問題になっている。毎年、新人研修会を行うなど対処してきたが、危ぐしていたことが現実となってしまった。今後、選手の指導を徹底する一方で、過激なファンへの対策や会場警備も検討し直すという。
 処分を受けたのはペーサーズのロン・アーテスト(25)ジャーメイン・オニール(26)スティーブン・ジャクソン(26)と、ピストンズのベン・ウォーレス(30)ら。ピストンズは今後の試合で警官と警備員を増員する。
 乱闘はペーサーズが97−85とリードした第4Q残り45秒に起きた。アーテストの反則から両軍もみ合いに発展。試合が中断していた際、氷の入ったカップがスコアラー席に横になっていたアーテストの顔面に当たったことで、アーテストが激高。スタンドに入ってファンを殴り、ジャクソンも加勢。さらにコートに入った客をアーテストとオニールが殴り、ウォーレスはペーサーズの選手と乱闘した。試合はそのまま打ち切りとなった。】


ちなみに、日本でもこんなことが(共同通信)

【Jリーグは16日、1部(J1)鹿島に対し、10月23日にカシマスタジアムで行われた浦和戦で一部の鹿島サポーターが禁止されている発炎筒などを使用したり、ピッチに乱入してMF本田泰人ともみあった問題で、けん責処分と制裁金100万円を科した。
 観客席に空き缶を投げ返し、観客のピッチ乱入のきっかけをつくった本田は厳重注意とした。】

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 それにしても、このNBAの乱闘騒ぎはものすごいというかなんというか…僕もその映像を観たのですが、選手同士でのコート内での乱闘ならともかく、スタンドにまで入っていって、ファンに殴りかかるというのは、やっぱり「暴挙」ですよね。もっとも、そのキッカケとなった心無いファンの行為に関しては、アメリカ国内でも、「アーテストが厳しく処分されるのなら、この『ファン』も、それなりの処分を受けるべきだ」という声も大きいそうです。もちろん、プロスポーツ選手ともなれば、多かれ少なかれ、ファンからの罵声を浴びせられるのも「仕事のうち」なのでしょうが、では、「ファン」がやることなら、どんなことに対しても耐え忍ばなければならないのか?と問われたら、「それはおかしい」と言わざるをえません。だいたい、こういう「迷惑なファン」のおかげで、この試合を観に来ていた大部分の良心的なファンは、試合が途中で打ち切られるという酷い目にあったわけですから。そりゃ、一部には、「歴史的乱闘の目撃者になった」ことを世論でいる人だっているかもしれないけれど。
 それにしても、「ファンとしての流儀」がなっていない人というのは、けっして少なくないような気がします。僕だって、コンサートに行ったときに、後ろの席の女の子がずっとカラオケ状態で大声で熱唱していて、「オレはお前のコンサートに来たんじゃないっ!」と内心怒りまくっていたこともありましたし、野球の試合で、酔っ払って下品な野次を飛ばし続けるオッサンの隣の席になってしまい、終始息苦しい思いをしたこともありました(結局途中で帰りましたが)。コンサートやスポーツの試合で、「黙って正座して観ろ」なんていうのはあんまりですし、ときどき飛んでくる野次なんてのは、それはそれでひとつの「風情」みたいなものではあるのですが、やっぱりそれも程度問題。少なくとも近くに座っている人が困ってしまうような人は、「迷惑ファン」のカテゴリーに入れざるをえないでしょう。にもかかわらず、本人たちは「熱烈なファン」だと思い込んでいるのです。
 余計なおせっかいなんだろうけど、どうしてそこまで他人のことに夢中になれるのか、僕には理解不能です。というより、自分の日頃鬱積した不満の捌け口としているだけなのにもかかわらず、「ファンを大切にしろ!」なんて相手に強制するのは、逆に「ファンの暴力」みたいなもののような気もします。「自分たちは『ファン』だから、『サポーター』だから、選手やチームは自分達に感謝し、言いなりになるべきだ!」って言うのは、あまりに理不尽なのではないでしょうか。「一般人」同士であれば、いきなり氷の入ったコップを誰かに投げつけたら、そりゃケンカになってもしょうがない。観客側には、相手は「公人」であり、「ファンを大事にしなければならないスポーツ選手」だから、やり返してこないに決まっている、という「甘え」があったと言われても仕方ないでしょう。日常生活で、あんなゴツイ大男にケンカを売るなんてことは、この「迷惑ファン」だって、まずありえないはずだし。
 ある意味、これだけ情報が氾濫している社会になって、選手とファンの距離は、とくにファン側からすると、近づきすぎている面もありそうです。お互いに一歩引いて敬意を持って接すれば、こんなバカバカしい騒ぎは起きないはずなのに。
 スタンドに殴りこみなんていうのは度を越した行為ですが、こうなる下地というのは、たぶんあったのだと思います。これからは、野球の試合でも、観客をファールボールから守るネットではなくて、選手を観客から守るためのネットが必要になるかもしれません。
 「選手も人間で、オレ達と一緒だ!」と言うのなら、まず、自分の隣の人に迷惑をかけないようにしましょうよ、その人も「同じ人間」なんだからさ。