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2004年11月22日(月)
「ドラゴンクエスト」が変えたもの

毎日新聞の記事より。

【人気ゲーム最新作「ドラゴンクエスト8」が27日、発売される。子どもたちが学校を休んでゲーム販売店の前に行列をつくるなど過去に社会現象ともなったビッグタイトルのため、発売元のスクウェア・エニックスは販売開始時間を午前7時に指定するなど発売前から話題を呼んでおり、400万本を超えることも予測される。】

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 「ドラゴンクエスト8」、本当に今週末発売なんですね。毎回毎回待たされるので、逆に出るという実感が湧かなくなっているような気がするくらいです。今回はむしろ、いつもよりアッサリ発売されるなあ、と感じられます。毎回「年内発売予定」と言いながら、本当にその年の内に出たことはありませんでしたから。
 「ドラゴンクエストの歴史」というのは、ある意味では、「ゲームという存在が、社会的に認知されていく歴史」でもあったのではないでしょうか。「ドラゴンクエスト1(便宜的に『1』をつけておきますね)」では、週刊少年ジャンプが異様に持ち上げている、有名人が大勢で作っているゲーム、という感じだったのですが、「1」を遊んでロールプレイングゲーム(以下PRG)の面白さにハマった人が続出したのです。「ドラゴンクエスト2」のときには、売り切れが続出して争奪戦が話題となり、朝のワイドショーで「これが、その『ドラゴンクエスト2』です!」なんて、たぶんゲームのことなんて全然知らない司会者が、なにか異次元からの物体であるかのように紹介していて、僕は「ゲームの画面がテレビの普通の番組に映し出されていたこと」にひそかに興奮していまったものです。それまでのゲームへの認知度というのは、ファミコン前までが「不良がやるもの」で、ファミコン以降は「所詮コドモの玩具」というのが世間の目だったので、この「陽のあたる場所」へのゲームの進出というのは、本当に画期的なものだったのです。
 「ドラゴンクエスト3」では、ビッグカメラでの大行列が話題になって、「スーパーマリオブラザース」と肩を並べる「ゲームの代名詞」になりましたし。「RPG」を他人に説明するときには、「経験値を上げてキャラクターを成長させて…」とか長々と語るよりは、「ドラゴンクエストみたいなゲーム」と一言で済ませたほうが通りが良いくらいですからね。
 ただ、その一方で、あまりの人気に「ドラクエカツアゲ事件」とか「学校を休んで行列に参加」とか、教育上望ましくない事件で槍玉に上げられることが多かったのも事実です。「正義の勇者として、悪いヤツらを倒して世界を救う」というゲームを、他人からカツアゲして遊んでも面白いのだろうか?と僕は思うのですが、「それはそれ」と割り切れる人もいるみたいなんですけどね。
 まあ、最近めっきり発売間隔が開きまくっている「ドラゴンクエスト」シリーズというのは、ゲームファンにとっては「お祭り」みたいなもの。実際は、近所のセブンイレブンであらかじめ予約でもしておけば、この秋空の下行列しなくてもいいのでしょうし、そのほうがよっぽどラクダと思うのですが、「行列してでも手に入れたい」というよりは、むしろ「行列すること」も含めてのひとつのイベントなのかな、という気もします。

 それにしても、「1」が発売されてから現在までの20年近くのあいだには、いろんなものが変わっていきました。「ファミコン」は「プレイステーション2」になり、デパートのオモチャ売り場でしか買えなかったゲームは、街のあちこちにあるコンビニや専門店で気軽に入手できるようになりました。以前は同級生に聞こうかどうか散々迷ったゲームの攻略情報は、ネットで簡単に知ることができます。そして、寒空の下、手持ち無沙汰で並んでいた人たちの手には、携帯電話が握られています。そして、ゲームの話題は、ゲーム専門誌だけではなく、ごく普通の趣味のひとつとして、世間に溢れるようになりました。ゲームの話題が、「カツアゲ事件」みたいなネガティブな内容以外で、こんなふうに新聞に載るなんて、20年前の僕は思ってもみなかったのに!

 ゲームに対する人々の嗜好が細かく分かれてしまった今、「ドラゴンクエスト」というのは、最後の「共通項」なのかもしれません。僕などは、「8」で遊ぶ前からすでに、「きっと、これを遊んでしまったら、『9』が出るのは、また5年後とかなんだろうなあ…」と寂しくなりつつあるんですけど。