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2004年11月11日(木)
「歯止めが利かなかった」66歳のオトコ

日刊スポーツの記事より。

【警視庁少年育成課と町田署は10日までに、児童買春禁止法違反などの疑いで、東京都調布市菊野台、医師当間正三郎容疑者(66)、都内の高校1年の少女(15)ら計3人を逮捕した。
 当間容疑者は東京都北区中十条2丁目で内科・泌尿器科の診療所を経営。約5年前から患者の女子高生らに援助交際を持ち掛け、これまでに少女約70人と診療所内でわいせつな行為を繰り返し、ビデオで撮影していた。
 調べによると、当間容疑者は6月、少女から紹介を受けた都内の高校1年の女子生徒(16)に6万円を支払い、診療所内でわいせつな行為をした疑い。少女は3万円の仲介料で当間容疑者に女子生徒を紹介した疑い。
 当間容疑者は「自分では歯止めが利かなくなっていた。捕まってよかった」と供述している。】

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 こういう「トンデモ医者」が登場するたびに、「医者ってやっぱりモラルに欠ける」なんて一括りにされがちな同業者としては、「捕まってよかった」なんて言うくらいなら自首しろよ、とか思わなくもないのですけど。
 いや、こう言ってはなんですが、日本中に医業を生業としている人間は、何十万人というわけで、この人ひとりのせいで、「医者って反社会的」という先入観を持たれるのはなんだかやるせない。
 しかしながら、「受診した女子高生に援助交際をもちかけ」とか「診療所内でわいせつな行為」なんてのを読むと、同業者としては「地に堕ちたな…」と情けなくもなるのです。そんなことされたら、普通の病院でも、若い女性は病院で診察を受けるのに、不安を抱くようにもなるでしょうし。
 そして、診療所という「アンタッチャブルな空間」が、この医師のこんな行為の温床になったというのも事実でしょうから。
 それにしても、僕を驚かせたのは、この猥褻医師の年齢が66歳という年齢であったことです。確かに閉経というひとつの区切りがある女性と違って、男性の場合は高齢でも生殖能力があるケースも珍しくはなく、ハリウッドスターなどは還暦を過ぎてからの子供というのもときどきみられます。とはいえ、一般的な日本人のイメージからすると、66歳というのは、「セミリタイア」という感じで、年金をもらって悠々自適、という年齢ではないでしょうか。
 少なくとも、「自分でも止められないような性欲」をもてあましているような年ではないだろう、と30代前半の僕は、考えてしまうわけです。
 この「66歳男性」が、異常体質ならいいのですが、正直なところ、「金があって」「自由にできる空間があって」「若い女性と手篭めにするチャンスがあって」という状況であれば、「歯止めが利かなくなる」男の高齢者というのは、けっして少数派ではないのかもしれない、という気もします。病院勤めをしていると、人間の「いつまで経っても、枯れてしまえない面」みたいなのを目の当たりにすることだってありますし。
 もちろん、だからといってこんな行為に及ぶのは、人間として恥ずかしく、情けないことだと思います。この人は、66歳にもなって、今まで築き上げてきた社会的な地位も信用も失ってしまったのですし、この診療所も潰れ、家族も非難をあびることになるでしょう。猥褻な行為を行った女性が約70人で、この医師が一連の「行為」に使ったお金が合計一千万くらいだそうですから、相手にとっても「上客」だったから、ここまでバレなかった、のかもしれません。
 そういう意味では、この窓口となった女の子にも問題はあるのですが、「未熟さ」を利用するというのは、大人としては恥ずべき行為です。

 リスクを頭の中では自分でも認識していた(つもり)はずなのに、実際はこんなふうに行きつくところまで行ってしまうという、「性欲」というものの理不尽さと禍々しさ。年を取ったからといって、人間「枯れる」ばかりじゃなくて、若い頃なら「将来のためにならない」とガマンできていたことも、「何年生きられるかわからない先のことよりも、現在の快楽」という誘惑に負けてしまうこともあるのかもしれません。
 「高齢者の性」というのは、本当に難しい問題ですね。お互いが大人で、それを望んでいて、可能な体であれば、年齢を理由に否定するべきものでもないでしょうから。「もう年なんだから」と他人は言うけれど、そういう「客観」と自分の本音の部分での「主観」の間の溝は、永遠に埋まることがないのでは。

 「人間はいくつになっても、悟れない生き物」であるということだけは、きっと真実なのでしょうけど。