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2004年11月04日(木) ■ |
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「楽天よ、ファンを大切にしろ!」って言われても… |
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河北新報の記事より。
【プロ野球の新球団「楽天イーグルス」の誕生を祝い、本拠地の宮城球場(仙台市宮城野区)で3日、行われた歓迎セレモニーで、雨のスタンドで待たされたファンの一部が怒りだす一幕があった。降雨で予定が狂ったのに加え、主催した宮城県の対応のまずさが手伝い、祝賀ムードにすっかり水を差された格好。「ファンを大切にしろ」と怒声も飛んだ。 県によると、セレモニーは当初、グラウンドで行われる予定だった。スタンドを一般客に無料開放し、楽天の三木谷浩史社長と浅野史郎知事とによる協定調印を盛大に演出する手はずだった。 ところが3日の仙台は朝から大雨で、県は球場2階の会議室に会場を変更。出席者は関係者に限定し、正午から約1時間、調印のほか、三木谷社長や田尾安志監督のあいさつなどのセレモニーを行った。 詰め掛けた約2000人のファンは行き場がなく、「最後に抽選会があります」との説明を受けて、ほとんどがネット裏で立ったまま傘を差して待ち続けた。この間、状況説明はほとんどなく、30分程度が過ぎたころから「どうなっているんだ」「スタッフじゃなくファンを大切にしろ」と怒りの声が飛び交った。 セレモニーは窓越しに公開され、会議室前の通路もファンであふれた。が、実際は声しか聞こえず、怒ったファンが「見えないぞ。座って取材しろ」と、報道陣を怒鳴り飛ばす場面もあった。 宮城野区の女性(69)は「テントを張るなどしてグラウンドで調印式を行えなかったのか」と怒りが収まらない様子。兵庫県からわざわざ来たという男性(46)は「関西なら暴動が起きている。スタンドにセレモニーの音声を流すなど工夫すべきだ」と不満をぶちまけた。 県宮城球場フランチャイズ支援局の担当者は「できる限りのことをしたが、必ずしもすべての人に満足してもらえなかったかもしれない」と済まなそうな表情。楽天広報部は「雨の中、集まっていただいたのに、不愉快な思いをさせて申し訳ない。11月中にファンの方々と対話できる機会をあらためて設けたい」と語った。】
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「楽天イーグルス、波乱の船出」という感じなのですが、仙台市民の9割は「先に名乗り出てくれたライブドアを応援していた」という調査結果もあり、この新球団が地元に受け入れられるかどうかというのは、これからの球団運営にかかっているのでしょう。 それにしても、この対応はいかにもまずい印象で、去年の日本ハムは北海道移転の際に、SHINJO選手の公開契約とか、とにかくファンにアピールしようと一生懸命だったのと比較すると、ちょっと「殿様商売的」という気がします。確かに、テントを張ってでもグラウンドでやるか、別の会場で行うかにしたほうが良かったのでしょう。 ただ、今回の新球団誕生の経緯には、福岡へのダイエーホークス移転とか北海道への日本ハム移転と違って、仙台市民にとっては「長年待ちに待ってやっと来てくれた球団」というより、「地理的な問題で、なぜか2球団(候補)が急に乗り込んできた」という感じなのではないでしょうか。もちろん、野球好きの人にとっては嬉しいには決まっているのですが、2004年に東北に新球団ができるなんて、地元の人でも今年の元旦には思ってもみなかったのでは。 「売り手市場」になってしまった仙台の人たちが、どこまでこの「楽天イーグルス」に対して愛着を感じられるかというのは、大きな課題です。僕はダイエーホークスが福岡に移転してきてから現在の人気球団になるまでの過程をずっと見てきましたが、ダイエーだって、移転してきた当初は、地元の人たちは「博多は西鉄ライオンズ(=西武ライオンズ)」という意識が色濃く残っていて、西武戦ではビジターの応援のほうが賑やかだったくらいですから。 そんな球団運営の困難をなんとか力技によって乗り越えた一方で、高塚前社長の不祥事のような「歪み」が出てしまったのも事実で。
今回の楽天の新球団というのは、正直言って、楽天側も「50年ぶりのゼロからの新球団」という状況にまだ対応しきれていない面もあるでしょうし(だって、「前例」は50年前ですから)、それはある意味「仕方のないこと」のような気もします。楽天のスタッフだって、今年の元旦には、自分たちがプロ野球の球団経営をやるなんて夢にも思っていなかっただろうから。 僕は、「ファンを大切にしろ!」とか「関西なら暴動だ」とか叫ぶ「自称ファン」の人たちにも、ちょっと違和感があるのです。今の「楽天イーグルス」にあるのは、監督の田尾さんとスタッフと三木谷社長とキーナートさんくらいで、肝心の選手はまだひとりもいない状態なのに、「この人たちは、いったい何のファンなのだろう」って思いませんか?確かに、爽やかなイメージの田尾監督にはファンも多いかもしれないけれど、今の「東北楽天」は、まだ名前だけの存在に等しいのに。 たぶん、仙台市民にとって、「長年待ち望んだ球団」であれば、ファン候補の人たちも「まだ球団側も運営に不慣れなんだから仕方がない」と大目にみてくれる面もあったと思うのです。 でも、「突然やってきて、先に名乗りをあげたライブドアを追い落とした楽天イーグルス」に対して「ファン」たちは、最初からかなり高いレベルの「手馴れたファンサービス」を要求しているように感じられます。いくらなんでも、それはちょっと難しいのではないでしょうか。
いくら資金があっても、あの老朽化した宮城球場を本拠地にして、合併球団のプロテクトから外れた選手と他球団から集めた戦力外や出番が少なかった選手、そして新人や外国人の寄せ集めチームが、一年目から「にわかファンが満足するような結果」を残せるほど甘くないと思うのです。どんなにがんばって選手をかき集めても、おそらく「レギュラーが怪我したら、その代わりに出てくる選手は大幅にレベルダウン」という感じでしょう。 それは、当然のことなんですけどね。
ゼロからの新球団なんだから、応援する人たちも一緒にゼロからの苦難を乗り越える覚悟がなければならないはずなのに、この「ファンとの温度差」というのは、けっして現時点では「楽天的」にはなれないものだと思います。 球場・気候・周辺人口と交通の便などからの今後の球団経営の困難を考えると、草葉の陰の人のほうが、むしろ「いいとこどり」だったのではないかなあ。
それでも、「ゼロからの新球団立ち上げ」っていうのは、ものすごく魅力的なコンテンツではあるんですけどね。
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