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2004年11月05日(金) ■ |
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サッカー日本代表に「消化試合」は許されないのか? |
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共同通信の記事より。
【日本サッカー協会は5日、ワールドカップ(W杯)アジア1次予選3組最終戦のシンガポール戦(17日・埼玉)の日本代表18人を発表、ジーコ監督が代表チームに功績のあった選手を招集したいと提案し、注目された三浦(神戸)ら現役の元代表は選ばれなかった。アテネ五輪代表の大久保(C大阪)が9カ月ぶりに復帰した。 日本は既に5戦全勝で来年の最終予選進出を決めたことから、欧州組も招集しなかった。大久保以外はW杯1次予選のメンバーで、ジーコ監督は「選手たちの声を率直に受け止めた」と説明。チーム内は控え選手の出場機会を求める声が大勢であることを尊重した。 チームは9日に集合してさいたま市内で合宿。。選手は13、14日の天皇杯全日本選手権のためいったん所属クラブに戻り、15日に再集合する。】
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ジーコ監督が、「消化試合」であるシンガポール戦に、今まで日本代表を支えてきたカズこと三浦和義選手や中山雅史選手などを招集して、彼らの花道を作ってあげたい、と発言した当初の雰囲気は、「それもいいんじゃないかな」というものだったと思います。世間一般の「代表戦はなるべく観る」という程度の「サッカーファン」の多くも、「消化試合なんて面白くないし、いいアイディアだ」と考えていたのではないでしょうか。 でも、僕が予想していた以上に、このジーコ監督のアイディアに対する風当たりは強くて、結局、「出場機会が無かった、若い選手たちを試す」という方針になったようです。 僕としては、「せっかくのいい機会だったのに、残念だなあ」という気持ちと「確かにここで油断していたらダメだ。ワールドカップ出場そのものだってまだまだ遠い道のりなのだし、日本は『ワールドカップに出て当然の国』じゃないのだから」という気持ちが半々といったところです。
しかし、実際問題として、「若手を試す」ためのこのシンガポール戦、果たしてどの程度「テスト」のために役立つかは疑問のような気がします。いくら「真剣勝負」と言ってみたところで、シンガポールの選手たちにとっては「消化試合」の観は否めないものでしょうし、「できれば日本に一泡吹かせてやりたいけど、相手も若手の『お試しモード』だし、とりあえず試合をして、あとは日本観光だな」というレベルかもしれません。こんな試合で怪我したくもないだろうし。 出場機会に恵まれなかった日本代表の選手にとっては「雰囲気に慣れる」ことは大事なんでしょうけど、消化試合でのテストというのがあまりアテにならないのは、プロ野球の消化試合を観ていてもわかります。もちろん「試さないよりマシ」なのも事実ですが。
こういうエピソードを耳にするたび、僕は「やっぱり日本人は真面目だよなあ」と、考えてしまうのです。今年のオリンピックの野球の予選の最終戦で、日本を研究し尽くしていたオーストラリア代表は、わざとカナダ代表に負けて予選4位となり、予選1位通過の日本を準決勝で対戦するようにしたそうです。 でも、もし逆の立場で、日本が「負けたほうが先のことを考えれば有利」な状況であったとしても、おそらく大部分の日本人は「目の前の勝負にワザと負ける」という行為に納得できないという気がします。「相手に失礼」とか言う人も多いからなあ。 あのときのオーストラリアの立場で言えば、「予選最終戦のカナダ戦を全力で戦って勝ち、さらに準決勝でキューバに勝てばいいじゃないか」という発想が、日本の常識。 勝つことが将来的に不利になるような状況ですら、「全力投球」しなけばならないという、一種の強迫観念に囚われているんですよね。
僕はこういう機会にこそ「肩の力を抜くトレーニング」とか「負けてもいいから、試合を楽しむシミュレーション」をやっても良かったのではないかなあ、とか考えてもいるのです。常に緊張の糸を張り詰めていようとしても、人間の精神力には限界もあるのだし、こんな「機会」は、この先そんなにあるとは思えないから。 まあ、ジーコ監督が、普通の「親善試合」ではなくてワールドカップ予選でこんな「企画モノ」を考えたのも、「ワールドカップ予選じゃないと、なかなか盛り上がらない日本のサッカーファン」という背景もあったのだとは思いますけど。 この調子なら、「普通の親善試合」だって、なんらかの「次につながる意味」を求めてしまうものだろうから、どうせなら、この「注目される消化試合」くらい、往年の功労者たちのプレーを楽しみながら観たかったと思うのは、僕だけでしょうか?
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