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2004年10月21日(木) ■ |
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BMWを衝動買いさせる接客術 |
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「変?」(中村うさぎ著・角川文庫)より。
(「依存」をテーマにした、「買い物女王」こと、中村うさぎさんの対談集の一節です。文筆家・本橋信宏さんとの対談より)。
【中村:違う自分になりたい願望ね。それは、私にも確かにある。ちょっと話がそれますが、買い物依存症には二種類あるんですよ。ひとつはスーパーや百円ショップなどで、これは絶対に使わないだろうというようなスポンジなどを片っ端から買って、とにかく量で快楽を味わうタイプ。それと、私みたいに買う量自体は少ないけど高額商品をポンポンポンと買って、そのスリルに快楽を感じるタイプ。このふたつのタイプが、いつも「買い物依存症」という病名でひとくくりにされるのが、納得いかなかったんですよ。このふたつでは、買い物の動機が違うんです。前者はコレクター的な要素があると思うんですね、巣にいっぱい藁を持って帰るような鳥みたいな。後者は、虚栄心が大きな動機なんですよ。私は明らかに後者なんです。虚栄心からブランド物を買ってしまう。
本橋:ある意味、ブランド依存でもあるんだ。
中村:そうなんです。高級ブランドを身につけると、自分がワンランク上の女になったような気がするんですよ。
本橋:ブランド物って、確かにコンプレックスを刺激しますよね。僕も薬でラリって、BMW750iLを衝動買いしたことがある。代理店に行ったらセールスマンが冷ややかで、「こいつ。どうせ買えねぇだろ」って感じなんですね。それでムッとして、即決で買っちゃったんです。
中村:あー、そうなのよねぇ。コンプレックスの強い人間は、ムキになっちゃうのよ。私も若い頃は、シャネルなんか、こーんなに敷居が高くてさ、店の中に入れなかったの。もう、別世界で。そんで小金を稼ぐようになったら、豹変しちゃって。もう鼻の穴膨らませて買いまくっちゃってさ。今までの復讐みたいに。ざまーみろって感じでね。それがまた気持ちよくって、やめられなくなったのね。】
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いや、いくらラリっていたとしても、コンプレックスが刺激されたとしても、「衝動買い」でBMWなんてありえねえ!と思いながら、僕はこれを読んでいたのですが。 あまりブランド物に興味を持てない人間なので、実際のところはよくわからないのですが、異性としては、いくらシャネルに身を固めていても、泉ピン子さんや叶姉妹に対しては、むしろ引いてしまう男のほうが多いのではないかなあ、とか思うのだけれど。
それはさておき、この「BMW衝動買い」の話からすると、セールストークというのは、必ずしも真面目にお客さんの相手をするだけが「買ってもらうための手練手管」ではないのかもしれませんね。ここに書いてあるように「コンプレックスを刺激されて、BMW即決」なんてお客さんもいるのならば。 そんな行き当たりばったりで高額の買い物をして、よく払えたな、なんて僕はつい考えてしまうのです。 たぶん、真摯な態度で店員さんが本橋さんを接客しても「いやーBMW欲しいなあ、でも、そんなお金ないんだよね。ゴメン!」ということで、話はオシマイだと思います。普通、無い袖は振れませんから。 でも、人間というのは不思議なもので、「欲しい」という単純な欲望以上に、自分のコンプレックスから「買わなければならない」「やらなければならない」という「義務感」みたいなものに捉われてしまうことがあるようなのです。 中村さんではないですが、「シャネル、ザマミロ!私にだって買えるんだから」とか毒づきながら棚買い、みたいな矛盾。
僕も「買う気がない」(もしくは、買うお金がない)にもかかわらず、「どうせ買わない客」として扱われるのは、なんとなく不快な気がします。逆に、店員さんに徹底マークされて逃げられない状況というのも、それはそれで辛いのですが。 でも、こういう「お客のコンプレックスを刺激するような接客」というのも、ひょっとしたらアリなのかもしれませんね。僕も見栄っ張りなので、注意しなくては。 まあ、こういうのって相手を間違えたらトンデモナイことになりそうだから、ワザと「どうせ買えないだろ接客」をやるのは、かなり勇気がいると思うのですけど。
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