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2004年09月30日(木) ■ |
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CCCDの壁が崩壊したあとに来るもの |
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読売新聞の記事より。
【レコード大手のソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)は30日、音楽をパソコンで複製できないように「コピーコントロール」処理をしたCD(コンパクトディスク)の発売をやめ、11月17日発売の商品から通常のCDに切り替えると発表した。
SMEJは、違法な複製ビジネスを防ぐ目的で、2003年1月からCDにコピーコントロール処理をしてきた。処理したCDは一般的にMD(ミニディスク)やカセットテープへのコピーは可能だが、ハードディスク(HD)や別のCDへの書き込みができず、一般利用者の不評が高まっていた。
SMEJは「著作権保護に対する認識が高まり、成果を得たため」と説明するが、HD搭載型の携帯音楽プレーヤー「iPod」の急激な普及で、音楽をHDに取り込む楽しみ方が広がったことが影響したとも見られる。
日本レコード協会によると、現在、新作CDの約10%がコピーコントロールCDという。同業のエイベックスも9月から通常のCDへの切り替えを始めている。】
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エイベックスに続いてソニーも、ということですから、どうやら、悪名高きコピーコントロールCD(以下CCCD)も、ようやく見直される時期が来たようです。 僕は現在、パソコンに向かって仕事をしていることが多く、気分転換にヘッドフォンをして音楽を聴くこともあるのです。そういう場合に、「パソコンでは再生できないCCCD」に苛立ちを覚えたことは、一度や二度ではありません。 「どうしてちゃんとお金を出して買った自分のCDなのに、自分のパソコンで聴けないんだ!」って、やっぱり思いますよね。 このCCCDの理不尽さに、立ち上がったアーティストや音楽関係者たちの努力とユーザーからの非難もあったのでしょうが、実際のところはこの記事にあるように、「CCCDにしても、期待していたほど売り上げは伸びず、コストを考えると『iPod』などの携帯型HDD音楽プレイヤーで聴けないということで買い控えられるデメリットのほうが大きいとメーカーが判断したから」なのだと思います。 最近は音楽不況の傾向はずっと続いていて、CCCDは結局のところ、その「救世主」どころか「憎まれっ子」になってしまったわけですが、とりあえず「自分で買ったCDが、より多彩な環境で楽しめる」ようになったのは、歓迎すべきことですよね。 とはいえ、考えようによっては、これは「試金石」なのかもしれません。 「CCCD廃止だ、勝った!」と僕などはつい考えてしまうのですが、その一方で、CCCDが無くなって、通常版CDになったとたんにコピーが横行し、「いままでのCDの売り上げ減少の幅は、CCCDのおかげでこの程度ですんでいたのか…」と痛感するようなことが起こったらどうでしょうか? 今度は、メーカー側もさらに必死になってコピーガード技術を開発してくるに違いありません。それでもおそらく「コピーする人はする」のですが、結果的にプロテクトのためのコストを負担するのは「ちゃんとCDを買っているユーザー」からになるわけです。 そうなってしまったら、コピーばかりが安く出回って、儲からなくなってしまったためにオリジナルが出なくなり、市場が大幅に縮小(あるいは消滅に近かったかも)しまった昔のパソコンゲームのような悲劇を生まないとも限りません。 たぶん、CCCDに反対してきた人たち(僕も含めて)にとっては、これからが本当の勝負どころで、「CCCDにしなくても、ユーザーは聴きたいアーティストのCDをちゃんと買う」という姿勢をメーカーにアピールしていかなくてはならないと思うのです。 「CCCD廃止」というのは、確かに「大きな一歩」なのですが、でも、これで終わりではないのです。メーカーが「やっぱりCCCDのほうが売れるな」と判断すれば、CCCDを再導入することは、技術的にはたやすいことでしょう。
「まだ道の途中」であるのもかかわらず、それを「ゴール」とカンチガイしてしまったために生まれる悲劇というのは、けっして少なくありません。 「人々を型にはめる共産主義が崩壊」し、市場経済を導入したあとに、市場に品物がなくなって人々は食べるものにも困り、「共産主義時代のほうがよかった…」なんて愚痴が聞こえてくる国があったり、「独裁者を排除して自由が勝利」したあとに、いつ果てるともない戦闘状態が続いている国とかも世界にはあるわけですから。 まだまだ、CCCDは死んでしまったわけじゃない。 「勝利」を宣言するのは、まだまだ時期尚早というものです。
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