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2004年09月08日(水) ■ |
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「眠っている人」に対する、さまざまな偏見 |
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「発作的座談会」(椎名誠、沢野ひとし、木村晋介、目黒孝二著・角川文庫)より。
(「絶対に飽きないものは何か?」というタイトルでの4人の会話の一部です。)
【沢野:でも、オレも悩みあるよ。夜八時頃寝るだろう。で、朝早く起きるんだけど、昼頃ちょっと眠くなってまた寝ちゃう。すると気がつくと夕方なんだ。
目黒:それが悩みなの?
沢野:なんだか頭がぼーっとして。子供はえらいよな。夜十時頃に寝て、朝七時に起きる。それでちゃんと学校へ行くんだよ。あれ見てると偉いなあと思って……。
木村:とにかくこいつらは克美荘(椎名さんたち4人が若い頃に共同生活していたアパート)にいた頃から寝るのが早いんだよ。
目黒:昔から変わらないんだ。
沢野:椎名はさ、ちょっとスキがあると眠ろうとしているだろ。タクシーの中とかで。あれは意識的なの?
椎名:いや、オレ寝るのが好きだから。
木村:あれを見てね、この頃椎名さん疲れているから、とか同情する奴がいるんだけど、違うよ。
目黒:ただ寝るのが好きなだけで。
椎名:オレ、水平だったらどこでも眠れる。
目黒:そうか、毎日でも飽きないのはラーメンとか酒じゃなくて、眠ることなんだ(笑)。】
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ああ、確かに「眠ること」だけはラーメンよりも酒よりも飽きずに毎日続けているなあ、と思いました。いや、僕にだって、「眠れない時代」だってあったし、「眠いけど、なんだか今寝たらもったいないような気がする」とか言いながら往生際悪く夜更かししてしまい、翌日になって眠い目をこすりながら、「ちゃんと寝ておけばよかった…」なんて後悔していることが多いんですけどね。
この文章の中で、僕がいちばん印象深かったのが、椎名さんが「寝るのが好きだから寝ている」ということへの世間の好意的な見方に対して、長年の盟友である3人がツッコミを入れているところです。 もし僕が飛行機の中で眠っている椎名さんを見かけたら、やっぱり「売れっ子作家だし、アクティブな人だから、きっと疲れているんだろうなあ」なんて自分で結論づけてしまうと思いますし。 しかしながら、「疲れているというより、単に寝たいから寝ているだけ」の椎名さんに対して(本当は、それなりに疲れてもいるとは思うけど)、先入観だけで「忙しくて大変だなあ」と結論づける一方で、僕は日頃、講義中に寝ている学生に対しては、「不真面目だから寝ている」とか「昨日夜遊びしてたんじゃないか?」とか、ちょっと不愉快な印象を持ってしまいます。もちろん、講義の内容自体がつまんない、っていう要因もあるんだろうけど。 でも、本当は、彼らは病気の親の看病をしていたのかもしれないし、一概に「眠っているからけしからん!」というのは、あまりに狭量なのかな。
いや、僕だって、「会議なんてどうでもいいから、いつも居眠りしている」わけじゃないんですよ、本当に。 「会議よりも眠るのが好きなだけ」なんだけどなあ。
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