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2004年09月01日(水)
目を見たら分かるなんて、絶対分かるわけない。

「PRIDE名勝負伝説」(宝島社)の桜庭和志さんのインタビュー記事「シウバ戦を”名勝負数え唄”にする」より。

【桜庭:そうですね。判定勝ちは勝ちじゃないと思います。なぜなら判定っていうのは、向こうにまだ戦う意思があるってワケじゃないですか。だから、完全に一本で勝つっていうのが理想ですね。相手が完全に参ったしたっていうのが、本当に勝ったってことですから。でも、秒殺はダメですけど。

インタビュアー:というと?

桜庭:面白くないですよ。見てる人もやってる人も。少なくとも僕は面白くないですね。最低でも、5分ぐらいは……。3分から5分はこう肌を合わして、ゴロゴロしてね。楽しむっていう訳じゃないですけど、相手の攻撃とか、防御の癖とかあるじゃないですか。そういうのを見ながらやりたいですから。

インタビュアー:3分から5分ぐらいやると、分かりますか。」

桜庭:なんとなく、分かりますね。よく、握手するとわかるなんて、そんなの絶対ないです。

インタビュアー:組むと分かる?

桜庭:分かんない、分かんない。ただ、力が強いか弱いかしか、分からないです。

インタビュアー:プロレスなんかだとよく、「ロックアップした瞬間に分かる」とか言うじゃないですか。

桜庭:動いてみないと、絶対分かんないですよ。あと、目を見たら分かるなんて、絶対分かるわけない。相手が攻撃してくるときも、目を見ていれば何をしてくるか分かるなんて言うけど、絶対分かんないですから。目なんか見てたらボーンって、ハイキック食らっちゃいますよ。】

〜〜〜〜〜〜〜

 桜庭さんはものすごい正直者か、ものすごい大嘘つきかのどちらかですね。僕は、ものすごく正直な人だなあ、と思ったのですが。
 こういう「組めばわかる!」「目を見ればわかる!」っていうような「闘う男の直感」みたいな説を振り回す人って、けっこういますよね。いや、格闘技に限らず「キミの目を見ていれば、何を考えているかわかるよ」なんて言う人も。
 確かに、視点が定まっていなければ「嘘をついているのかな?」とか、そのくらいのことはわかりそうなものですが、それだけの少ない情報でなんでもわかってしまうなんていうのは、一種の「幻想」なのでしょう。それは、本人にとっても、周囲にとっても共通の幻想。
 プロの格闘家の場合は、こういう「幻想」も含めて、ファンに夢を与えているのでしょうから、一概にウソツキよばわりするというのも「風情がない」というものなのですけど。

 どの世界でも、この手のハッタリをかます「プロフェッショナル」っていうのはいるもので、エンターテインメントの世界はともかく、重大な場面でその手の「勘」とか「閃き」みたいなものをアテにすると、とんでもないことになったりするわけです。桜庭さんも言っているように、「わからないから、何分間か闘って癖をみる」ことが大事。いずれにしても、物事を判断するには、情報は多いに越したことはないですよね。
 もちろん、「プロの判断基準」というのもあるんでしょうけど、その中には「知ったかぶり」に属するものも少なくないというのは、知っておいて損はないような気がします。
 本当に「知っている人」というのは、むしろ、そういう直感的なものに対して臆病になってしまうことも多いようですし。
 言っている人が自信たっぷりだからといって、無防備に信じてあげる必要なんて、全然ありません。
 必殺のハイキックを食らってから「しまった!」なんて思っても手遅れなんだからさ。