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2004年07月25日(日)
変わらない「新しい家族」

「ほんとに建つのかな」(内田春菊著・祥伝社)より。

【その後、お義父さんは家を見に来て、「みんな集まれ!」と孫を集合させて高額のお年玉を渡し(しかも私もその全額と同じ額のお年玉をちょうどお義父さんたちに用意してあり、結局そのままお返しするいやな嫁)、さんざんとんちんかんな感想を述べ、最後は和室でみんなに背を向け寝転がってテレビを独り占めしてボクシングの試合を見続け、全員で食事に行くことも無言で拒否した(途中子どもたちと散歩に行ったとき、自分だけいつも食べないハンバーガーを食べて食事を済ませてしまったのだ)。ユーヤがワインを勧めても、「ワインはいらない!ビールが一杯あればいい!」と彼に背中を向けたまま言っていた。もちろん百万返した件や、大喧嘩したことについて何の話し合いもなし、完全にそれらの話は無いことになっている。私は、「お義父さんは、いったい何しに来たんですか?」と聞きたいくらいだった。
 この人は、変わらないんだ。私はお義父さんの背中を見ながら遅すぎる結論を出した。私の方はもう出来るだけのことはしたつもりだ。その後もまだ健康に自信のないお義母さんを置いて一人でハワイ行ってご機嫌で帰って来たりしているようです。眼のことも、お義母さんとトモくんは二人で「もっと早く病院に来なければだめじゃないか!」とお医者にものすごく叱られたらしいが、その話を聞いている時、横で何故か「今度はもっと早く行かないとな!」とお義父さんが言うのを聞いた。なんでそのお医者はトモくんでなくお義父さんを叱り飛ばしてくれなかったのだろう。】

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 この話の伏線には、緑内障で倒れて入院したお義母さんに「ずっと目薬をさし続けた」トモ君(義父母と同居している、ユーヤさん(内田さんの夫)の弟)に対して、【いつも通りの時間まで文具店をやって、閉店時間になってからやっとお義母さんのもとへ行った】お義父さん、という事件があったのです。
 その状況で「今度はもっと早く行かないとな!」とお義父さんに言われれば、お義母さんとトモくんは、「ハァ?」という気持ちだったに違いありません。
 
 でも、世の中にはこういう「常に自分は正しい、という基準でしか、世界を解釈できない人」というのは存在するのです。この義父さんは、そんなに珍しい存在ではない。そして、こういう「自分中心の人」である義父さんにとっては、内田春菊さんという、「自分中心の嫁」というのは、非常に扱いにくい存在に違いありません。
 もちろん、この本を読んでいると、「そりゃ、こんなお義父さんがいたら、なんかイヤだなあ」と思うのですが、その一方で、自分が義父側に立って考えれば、内田さんのような「こちらを立ててくれない嫁」というのは辛いだろう、とも感じます。だからといって、なにもみんなの前で拗ねてみせる必要もないんだろうけど。
 実際のところ、「年を重ねているから、大人として譲り合う」という人ばかりではなくて、頑固さというのは、年とともに酷くなってしまうこともけっこう多いんですよねえ。

 こういう話を読むたびに、「結婚というのは怖いなあ」なんて、つい考えてしまうのです。本人同士の気持ちはさておき、こういう「おせっかいな周囲の人々」との軋轢でストレスを抱え込むカップルというのは、本当に多いんですよね。この話に出てくる「お義父さん」は、確かに困った人ではあるのですが、内田さんも【暴力をふるったり、金をせびらないだけ実の家族よりマシ】と書かれているように、傍からみれば「まあ、よくいる仕切りたがりのオッサン」ってレベルなのかもしれませんし。
 それが「家族」となると許せないところだらけになってしまう。

 結婚披露宴の締めの定番は、新郎新婦とその家族が並んで「新しい家族の誕生です!」という光景なのですが、あれは、すばらしい出発のようで、実は悩みのはじまりなのかもしれません。立派すぎる「新しい家族」も、どうしようもない「新しい家族」も、それはそれで難しいみたいだし。

 ほんと、結婚っていうのは、考えれば考えるほど遠く感じるものですね。