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2004年07月22日(木)
「糞屍呪癌姦淫怨痔妾蔑…」の親心

毎日新聞の記事より。

【法務省は22日、人名に使える漢字を大幅に増やすため、法制審議会人名用漢字部会がまとめた見直し案に対して国民の意見を募った結果を公表した。1308通の意見が寄せられ、約56%の729通が「糞」「屍」など一部の漢字を削除すべきだとした。同省はこの結果を踏まえ、一部漢字を削除する方針で、23日に開く部会が削除文字などを決める予定。

 部会は6月11日、人名に使える漢字を578字増やす見直し案を公表した。人名として適切か否かという観点ではなく、使用頻度を基に「常用平易」か否かで選んだため、人名にそぐわない字も含まれた。

 国民からの意見で、削除要望が多かったワースト10は、383通の「糞」を筆頭に「屍」「呪」「癌」「姦」「淫」「怨」「痔」「妾」「蔑」の順。「子供の社会的不利益や社会的混乱をもたらす」「学識、良識のない親に委ねるのは問題」などの声が多かった。一方、「掬」をはじめ新たに追加を求める意見も236通あった。

 23日の部会で国民の意見を検討し、削除・追加する文字を協議する。縁起が悪かったり、公序良俗に反するとして国民からの批判が特に集中した文字の削除については、おおむね委員の意見は一致している。しかし「削除は最低限に抑えるべきだ」「国民からの意見を基に相当数削除してもよい」など、削除数について見解が分かれているという。】

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 【383通の「糞」を筆頭に「屍」「呪」「癌」「姦」「淫」「怨」「痔」「妾」「蔑」】というくだりは、なんだかもう三文ホラー小説の一節ですかこれは…と思わず聞きたくなるようなシロモノなのですが、考えてみれば、1308通もの「国民の声」が寄せられたというのは、ものすごいことではありますね。たぶんみんな、目を皿のようにして578字の漢字を一字一字吟味したのでしょうから。
 それはそれで、「よくそんなに時間ありますねえ」とか考えてしまうのですが。
 逆に、925人の人は「糞」も許容範囲内、ということなのかな。「糞」なんて、わざわざ指摘しなくても論外!という人も多かったのかも。
 それにしても、「子供の社会的不利益や社会的混乱をもたらす」という意見はともかく、「学識、良識のない親に委ねるのは問題」というのは、ある意味「そこまで他人を信用できないの?」とも思えるのです。
 「今の親たちは、面白半分で『呪太郎』とか『淫子』とかつけるに決まっている!とか真剣に考えている「立派な大人」たちの数は、けっして少なくはないのですね。
 「悪魔くん」なんて実績(?)がありますから、その気持ちもわからなくはないけど、それにしても「学識、良識のないバカな親に委ねるのは問題」だから、自分たちが「教育的指導」してやる!という姿勢って、なんだかよけいなお世話ですよねえ。
 もちろん、「そんな漢字は、最初から候補に入れるなよ…」と僕も思いますが、「そんなの誰も使うわけない」とみんなが思っていれば、こういうのは「杓子定規なお役所仕事」に対する笑い話になっていたはずなのに。
 結局、みんな「子供にトンデモナイ名前をつけるような酷い親は、まだまだこれからも沢山いるはずだ」と確信している、ということですよね。他人の「親心」すら信じられないなんてせつないなあ。

 「名前」なんていうのは、つけられた側からすれば、平凡ならつまらなく感じたり、奇抜なら恥ずかしかったりで、「親心」というのも、なかなか名づけられた側には伝わりにくいものですけどね。
 僕の知り合いに親に名前の由来を聞いたら「とくに理由はないけど、かわいいでしょ」って親にアッサリ言われてなんだかガッカリした、という人がいます。やっぱり、「ちゃんとした理由」が欲しいというのもわかります。

 「親の心、子知らず」なれど、「子の心も、親知らず」
 他人にはわからない、ぬくもりとせめぎあい。