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2004年07月02日(金)
「青いバラ」は、本当に美しいと思いますか?

毎日新聞の記事より。

【サントリー(大阪市)は30日、「青いバラ」の開発に世界で初めて成功したと発表した。青いバラは「不可能の代名詞」とされ、1000年近く多くの育種家が挑戦したものの、咲かせることはできなかった。実際の色は薄紫色で、佐治信忠社長は「より青いバラを作り出して、世界中の人々に楽しんでもらいたい」と話した。同社は07〜08年の商品化を目指している。
 バラには青色の色素を生成する遺伝子がないため、交配で赤色の色素を薄めるなどして、青っぽいバラを作っていた。】


7月2日付の「天声人語」(朝日新聞)より。

【バラへの情熱は、門外漢には計り知れないところがある。愛好家たちはさまざまな色と形を貪欲(どんよく)に追い求めた。品種改良でこれほど多彩になった花は稀有(けう)だろう。ただ、青いバラだけは不可能だといわれてきた。一昨日、サントリーと関連会社が遺伝子組み換え技術で青いバラを開発したと発表、バラの歴史に転機をもたらすかもしれない。

 最相葉月さんの『青いバラ』(小学館)は、サントリーの開発計画も含め広範な取材でバラをめぐる世界を描いている。その上で、高名なバラ育種家が問いかけた言葉を読者にも投げかけた。「青いバラができたとして、さて、それが本当に美しいと思いますか」 】

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 実際の「青いバラ」の写真はコチラ
 僕の印象としては、記事にもあるように、青というより、紫陽花みたいな薄紫かな、という感じです。
 もともと青い色素を作る遺伝子のないバラを「青くする」のは不可能だと考えられていたのですが、今回のサントリーの偉業は、【青い色素を作るパンジーの遺伝子を組み込み、青色がはっきりと、安定して出るよう工夫した】ものなのだとか。
 要するに、「遺伝子組み換え」の技術を応用したものなんですね。

 食品ではありませんから、人体への影響が危険視されることはないでしょうけど、その一方で、僕も「では、青いバラというのは本当に美しいのだろうか?」という気もするのです。
 不可能の代名詞とされてきた「青いバラ」というのは、裏を返せば、「青いバラがあったら綺麗だろうなあ…」と思っていた人が、いかに多かったか、ということでもあるのです。
 そして、多くの人々の夢を吸収して、「青いバラ」というのは、その実体以上に美化されてきた面もあるのではないでしょうか?
 「不可能」だからこそ、みんなそれを追い求める、という存在。

 【「青いバラができたとして、さて、それが本当に美しいと思いますか」】というバラ育種家の言葉は、おそらく「青いバラなんて、そんなに綺麗なものじゃないよ」という意味ではなくて、「絶対に実現不可能な青いバラ」というイメージ以上に美しい花というのは、どんなに頑張っても作りようが無い、という意味なのだろうな、と僕は思うのです。
 「夢」だからこそ、青いバラは美しい。

 そんなことを言いながらも、時間が経つにつれて、青いバラというのは「当たり前の存在」になっていくのでしょう。「イメージほど綺麗じゃない」「そんなの不自然だ」と最初は感じる人が多くても、やっぱり、大事な人には珍しい花をあげたい、と思う人だって多いだろうし。
 それはそれで、なんだかちょっと寂しい気もしますね。

 ひとつの夢が叶うというのは、ひとつの夢が失われるということでもあるのです。
 さよなら、僕たちが夢見ていた「幻の青いバラ」。