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2004年05月13日(木)
雅子さまをバッシングした人々

共同通信の記事より。

【13日付の英紙デーリー・テレグラフは、皇太子さまが雅子さまについて「外国訪問がなかなか許されず、キャリアや人格を否定する動きがあった」などと語ったことを取り上げ「宮内庁は世継ぎの男児出産までは外遊に反対だとみられている」と報じた。
 記事は「皇太子、息の詰まる皇室に疲れた病妻に心痛」との見出しを掲げ、皇太子さまの記者会見の内容を紹介。外交官から皇太子妃となった雅子さまの経歴や、現在の皇室典範が皇位継承を男性皇族に限定していることなどを伝えた。】

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 皇太子さまの「雅子さまのキャリアや人格を否定する動きがあった」という発言は、当事者からのあのような発言が前代未聞であったということもあり、大きな波紋を呼んでいます。
 これらの「雅子さまバッシング」に関して、現在宮内庁やマスコミが責任を問われているのですが(まあ、残念ながら、マスコミは自分たちの報道姿勢に対してはあまり反省してはいないようですけど)、僕は正直なところ、宮内庁とマスコミばかりの責任ではないだろうな、と思うのです。
 僕にだって、その責任のわずかな一端はあるのではないかなあ、とも。
 雅子さまの前に秋篠宮さまと結婚された紀子さまは、僕が羨ましくなるほど清楚で慎ましい感じの女性でした。そのイメージは今でも変わらないし、当時高校生だった僕たちは、「紀子さんいいよなあ…」と語りあったものです。日本の男の大部分にとって、紀子さんはストライクゾーンのど真ん中だったような気がします。
 しかし、雅子さまが皇太子妃に決まったときの僕らの反応は、やや微妙でした。東大卒の才媛で海外生活が長く、有能な外交官。容姿も失礼ながら紀子さんよりも華やかで端麗。それでも、そういう「完璧さ」というのは逆に、僕の周りには雅子さんに「あんなキャリアウーマンみたいな人に、『皇太子妃』が務まるのだろうか?」という否定的な声が多かったのです。男にとっては、「高嶺の花」であり、完璧ならざる人々にとっては「コンプレックスを刺激させられる対象」だったのかもしれません。
 まあ、秋篠宮妃と皇太子妃というのは違いますし、美智子皇后の際もひょっとしたら世間の反応というのは、そんなものだったのかもしれませんけど。

 「男の子が産まれない」ことについて非難をしていたのは、実際のところ宮内庁の旧態依然とした人々だけではなくて、市井の普通のおばちゃんたちからも「雅子さまはダメねえ〜」という声をときおり耳にしました。女性週刊誌の影響なのかもしれませんが、少なくとも「子供を産むことについては、自分のほうが上」というような優越感もあったのかもしれません。雅子さまが皇太子さまの発言に「付け加えますと」と言ったことに対しても、皇室とは縁もゆかりもない一般庶民たちが「慎みがない」と批判をしていたり。

 「あんなに綺麗で、東大卒で頭が良くても、皇太子妃としてはダメじゃない!」というような、人々の内心の声こそが「雅子さまバッシング」の源泉なのではないかな、と僕は感じているのです。「マスコミは皇室と長嶋茂雄さんの悪口は書かない」と言われていますが、雅子さまバッシングの記事があれほど紙面を賑わしているのは、マスコミにとっても「アンタッチャブルな存在」ではない、ということを意味しているのかもしれませんし。
 「外交官としてのキャリアを生かした、新しいお妃像」を志向していたはずの雅子さまに宮内庁の人々や多くの国民が求めたのは、結局「伝統的な日本の家族の光景」である「一歩下がって夫や家族を支える」という「受け継がれてきたお妃像」だった、というのが、ひとつの結論なのだと思います。
 いまや「日本の幸福な家族のサンプルケース」というのが存在意義となった皇室に求められる「仕事」は、そんな「失われた理想の家族像」を現世に受け継いでいくことなのでしょうし。
 
 「人間的な皇室像」というのを求める一方で、真夏日にあの笑顔で人々に手を振る姿を求めるのは、やっぱり矛盾というものです。「開かれた王室」とか言いながら、某国王室のように暴露合戦、スキャンダル三昧な皇室像を日本人の多くは望まないでしょうし。
 「皇太子妃」というのは、「雅子さまには最も向かない仕事」だったのかもしれない、なんて考えてもみるのです。
 皇太子さまとのあいだに、どんなに深い愛情があったとしても…
 
 僕も自分の中に「そんなかわいそうな状況に追い詰められている雅子さま」に対する「せっかくのキャリアを生かせずに大変ですね」というような、「同情という名の優越感」の存在を感じて、イヤになってしまいます。
 本当は、皇室の内部事情というのは、自分の人生には関係ないはずなのに、そこに何かを投影してしまっている人々が、なんと多いことか!

 まあ、「皇室の旧弊」なんて言うけれど、皇室なんていうものは「伝統を守る」というのが重要な役割でもあるわけですから、改革というのは難しいところなのでしょうけど。
 
 「転職」できるならしたいんじゃないかなあ、「お妃」以外だったら、どんな仕事でもできそうだもの、雅子さま。