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2004年04月24日(土)
絶品!『ひじきの二度めし』

「食味風々録」(阿川弘之著・新潮文庫)より。

※あの、今日はちょっとシモ系の話なので、お食事中の方やそういう話が苦手な方はオススメできません。申し訳ない。

(作家・向田邦子さんとの「美味について」という対談の中で、向田さんが紹介していた「美味しいもの」の話)

【「こちらの話は、もう少しお品が下るんですよ」
 向田さんが言った。つまり、糞は糞でも人間の大便がからむ、食事中いいですか、婉曲にそう断って置いて、ひじきの話を始めた。
 「ひじきがやはり、食べても殆ど消化されずに、ちょっとふくらんだかたちで体外に出て来ます。それを集めて、洗ってもう一度煮たのが『ひじきの二度めし』、本当かどうか知りませんけど、最高に美味しいんですって。昔、海べで暮している貧しい人たちにとって、ひじきは大事な食べ物だったんでしょ。ただで手に入るし、おなかは充分くちくなるし、しかも二度使えて、二度目の方が味が良いっていうんですから」

(中略)

旧友Oの話で向田さんを思い出して、今これを書いている。「蚊の目玉」と「栗鼠の糞」と「ひじきの二度めし」と三つに共通しているのは、哺乳動物の腸管を未消化のまま通過した物質は、食品として絶品になるらしいという一点で、おそらく本当なのだろう。】

〜〜〜〜〜〜〜

 食通で知られる阿川さんも「残念ながら今なお、一つも試みたことが無い」そうなのですが。
 ちなみに「蚊の目玉」というのは、蝙蝠の糞を集めて漉して、その中の蝙蝠が食べた蚊の未消化のまま排泄される目玉を洗って乾燥させたもので、中華料理の高級食材として珍重されるそうです。
 「リスの糞」というのは、「コーヒーの実と花を食べたリスの糞を集めて乾かしたもので、東インドで最高の品質のコーヒーとされていた」そうですよ。
 まあ、どこまで本当の話かはわからないんですけどね。

 でも、僕も「イヌイットのごちそう」(アザラシのお尻の穴から中身をすするとか)の話は耳にしたことがありますし、そういう「美味」があってもおかしくはない気はします。うーん、しかしいくら美味しくても「ひじきの二度めし」だけはちょっと勘弁していただきたいのですが。

 食べ物の味というのは、舌だけで味わうように思われがちなのですが、実際は、においとか見た目というのはすごく大事なのですよね。そして「イメージ」というのも。
 東南アジアではご馳走とされている孵りかけの卵料理・ホビロンなんていうのは、多くの日本人にとっては、その味以前に外見による拒絶反応を示すものなのではないでしょうか。僕もたぶん、いかに「美味しい」と言われても、食べられないと思います。卵も食べるし、鶏肉も食べるのに「中間のもの」となると、どうも気味が悪い。食べ物というのは生活と密着しているだけに「慣れないものを食べる」というのは、けっこう勇気がいるものです。
肉だって、同じ動物の体の一部でも、「レバーはダメ」「ホルモン(腸)は苦手」という人は、けっして少なくないですし。

 逆に、「鶏肉だと思いこんで食べたらカエルだった」なんていうのもよくある話で、見かけでわからなかったら、僕だって人間の肉を食べてしまってもおかしくないなあ、とも思うのです。だいたい、食べた経験がないから、食べてみて「しまった!」と思うこともないでしょうから。
 まあ、あまりいろいろ疑わないから日常の食生活が送れているのかもしれません。その一方で「ミミズバーガー」なんていう都市伝説も生まれてくる、と。
 あらためて考えると、けっこう怖いものですね。

 まあ、フォアグラは脂肪肝だし、活け造りは外国の人からみたら残酷な見世物でしょうし、「美味しいもの」というのは、けっこう不健康だったり、ヘンなものだったりするのかもしれません。

 とはいえ、いくら美味しくても、やっぱりねえ…