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2004年03月24日(水) ■ |
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「週刊文春」の自作自演商法と「報道の自由」 |
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共同通信の記事より。
【田中真紀子前外相の長女に関する記事で出版禁止の仮処分命令を受けた「週刊文春」が、25日発売の4月1日号で「長女が『純然たる私人』とは考えていない」と主張し、裁判所決定に強く抗議する特集を組んだことが、24日明らかになった。 「裁判所には負けない」と銘打った特集は約45ページ。評論家、立花隆氏の緊急寄稿、詳細な検証記事、各界著名人35人のコメント、編集長見解などで構成した。部数は約83万部。 検証記事は今回の経過を時系列で示し「通常の取材活動と比べると、取材範囲を極力狭めている」とプライバシーへの配慮を説明。長女が前外相の選挙運動や外遊などに同行したことなどを挙げ「田中家の政治家が公私を厳格に峻別(しゅんべつ)してきたとは到底言えない」としている。】
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なんだか、これって「週刊文春」の自作自演なのではないか、という気がしてきたのですが。「裁判所には負けない」って言われても、裁判所だって、好きでこんな事件に関わっているわけじゃないでしょうし、せめて「田中家の圧力には負けない」くらいのほうが良いのでは。 ちなみに、83万部という部数は、「週刊文春」は「公称77万部」だそうですから、いつもより漸増という感じです。 彼らが言うところの「田中家の長女は私人ではない」という点は、確かに一理あるような気もします。とはいえ、件の記事を読んだ僕の感想は「そんなことをわざわざ『週刊文春』が、ページを割いて記事にする必要があるの?」というものでした。 要約すると、【田中真紀子さんの長女が真紀子さんの反対を押し切って結婚したが、夫の海外赴任中に、夫が出張で家を空けることが多いことなどですれ違いが大きくなり、結婚して1年くらいで離婚された】というものです。 うーん、この話そのものについては、「ああ、いきなり新婚で海外赴任、しかも夫がいない生活なんて、大変だったろうなあ、まあ、それですれ違いがあって離婚というのは、ありがちな話だ…」としか思えないのですが。
正直、こんなありふれた離婚が週刊誌に載ってしまうなんて、有名人はたまらないよなあ、なんて。「離婚」というのは、どう考えてもプライベートなことですし、それを報道することに「公共性」があるとは思えません。 「田中家の政治家が公私を厳格に峻別(しゅんべつ)してきたとは到底言えない」というのは、確かにその通りです。でも、だからといって、マスコミまで「公私を厳格に峻別しない記事」を載せてもいい、ということにはならないはず。それ以前に、こんなことを報道する価値があるの?ということを考えてしまいますし、こんなつまらないことで「報道の自由」「言論の自由」という、メディアが拠って立つ源を振りかざすのは、傍から見ると「権利の濫用」にしか見えないのです。政治家の汚職とか企業の問題ならともかく。 もちろん現場の人間にとっては「ここで妥協したら、なし崩し的に『報道の自由』が奪われてしまうのではないか」という危機感もあるのでしょう。「田中家だから許されないのか?」という思いもきっとあるのだと思いますが。
でもね、これは「田中家だから許されない」というよりは、今までは「そうやって傷つけてきた相手が、抵抗する手段を持たない弱い人々だったから」なのかもしれませんよ。
「田中家だから報道できない」のではなくて、「田中家でも報道してはダメなものはダメ」なのです。この記事そのものは、本当は、こんなふうに話題にならなければ、みんな読み飛ばす程度の「つまらない記事」なのに。
メディアはもっと「報道の自由」という権利を自分たちで大事にするべきです。そうしないと、いくら「狼が来たぞ!」と叫んでも、誰も信じなくなりますよ。 だいたい、「公私を厳格に峻別(しゅんべつ)してきたとは到底言えない」というのは、マスコミにだってあてはまることで、スポンサーやジャニーズ事務所に対しては、「プライバシーを尊重している」のでしょうか? そういう「オトナの事情」があるのもわかりますし、メディアが伝えてくれることによって、僕たちが知ることができることも、たくさんあるのは百も承知の上ではあるのだけど。 そして、医者や警察官がそうであるように、マスコミ人の多くは良心的な人であると信じたいのですが。
僕は、田中真紀子さんのことは大嫌いです。政治家としては全く見識がないし、故田中角栄氏が戦後の日本の政治家のうちで唯一「本物の平民出身」の総理大臣であるにもかかわらず(そして、それが田中角栄という政治家の最大の魅力なのに)、「家柄」とか「血筋」とか言っている、つまらない人だと思います。 でも、この記事は、ちょっとあんまりなのではないでしょうか? 「違法」となった場合に読んだ人の記憶から、記事のすべてを消すことができれば、「出版差し止め」をやる必要はないんでしょうけど。 どう考えても、「書かれる側」に比べて、「書く側」は無責任で、リスクが少ないのですから。
映画「MIB(メン・イン・ブラック)」の記憶を消す「ピカッ」ってやつがあれば、ねえ。
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