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2004年02月17日(火)
「なんでもあり」な日本の私

読売新聞の記事より。

【日米中韓で行われた「高校生の生活と意識に関する調査」で、日本の高校生は「男は男らしく」「女は女らしく」といった性差意識が突出して低いことが16日、教育研究機関のまとめで分かった。
 近年の男女共同参画社会の推進により、日本の若者意識が影響を受けたと見られる。
 調査は、文部科学省所管の財団法人「一ツ橋文芸教育振興会」と「日本青少年研究所」が昨秋、4か国の各1000人余りの高校生を対象にアンケートをした。

 日本が特異な値を示したのは「女は女らしくすべきだ」との設問で、肯定した人が28・4%しかいなかった。同じ問いかけを米国は58・0%、中国は71・6%、韓国は47・7%が肯定した。「男は男らしく」も、日本で肯定したのは43・4%(米63・5%、中81・1%、韓54・9%)で、4か国で唯一半数を割り込んだ。
 また、「結婚前は純潔を守るべき」との設問に対する肯定も、日本は33・3%(米52・0%、中75・0%、韓73・8%)と著しく低くなっている。
 さらに、各国の高校生の規範意識を探るため、14の行動を挙げて評価を求めたところ、日本は「学校のずる休み」を「よくない」と答えたのは27・4%しかなく、「親に反抗する」(よくない=19・9%)、「先生に反抗する」(同25・1%)も、批判は他の3か国より少なかった。】

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 「『男らしさ・女らしさ』日本の高校生は意識希薄」というタイトルがつけられたこの記事なのですが、結果をみると、「まあ、こんなものだろうな」というのが僕の印象です。確かに、現在の日本では「男らしさ」「女らしさ」というのは、ヘタに口に出したら時代錯誤としてバカにされるか、非難の的になるかのどちらかですし。男女ともに中性的なものへの憧れが強いのではないかなあ、などと思ってしまいます。
 でも、このアンケート結果から僕が感じたことは、「日本の高校生は、男女差別をしない柔軟な発想を持っている」というようなことではなくて、「日本の高校生の不安定な心」だったのです。
 実は、この記事を読んでいくと、日本の高校生は、ここで紹介されている「〜すべき」「〜はよくない」という「義務」「断定」で終わる設問について、ことごとく「そうは思わない」と回答しているのです。
 いや、彼らの気持ちは、なんとなくわかります。
 今の日本というのは、本当に価値観が多様化しています。ずっと「悪いこと」とされていたこと(例えば「不登校」であったり、「中高生の売春」であったり)についても、「それは悪いことだ」と明言する人のほうがむしろ少なくて、「不登校や売春だって、やってもいいんじゃない?」というような「ものわかりのいいオトナ」が世間に溢れています。
 「無宗教」を信仰している人々は、何に対しても合理的な態度をとるのがスマートで、「それは絶対に悪いことだ」と他人に言えなくなっているのです。
 「なぜ人を殺してはいけないの?」という問いに対して、おそらく一昔前の日本人の多くは「そんなのは昔から決まっていることだ。ダメなものはダメなんだ!」と答えていたのだと思います。
 でも、最近の合理主義・懐疑主義的な社会では、「うーん、本当だねえ、よくわからないねえ…論理的な根拠はないのかもしれない…ひょっとしたら、人殺しはそんなに悪いことじゃないのかなあ…」なんて考えこむ人も多いのではないかなあ。いや、そのことについて考えること自体は、けっして悪いことではないんだけど。

 何かを「絶対に正しい」と思い込むことは、非常に危険なことです。
 でも、その一方で、「正しいことなんて、この世界には存在しない」という思い込みもまた、人間として生きていく上では非常に足元を不安定にするものなのではないでしょうか。
 大人たちは、「子供の自由」を標榜しながら、実際は「生きていくための基本的な常識を教えていく」という責務を放棄して、「なんでもありなんだよ、何も信じちゃダメだよ」と言い続けているような気もするのです。
 「完全に悪いこと」はないのかもしれない。でも、「今の世の中で人間としてやってはいけないこと」の基準というのは、いつの時代にでも必ずあるはず。
 「なんでもあり」の世の中を教えることが、「子供のための教育」なのですか?

 僕は、もしこのアンケートが「女は女らしくすべき」という内容ではなく、「女は女らしくした方がいい」という設問だったら、回答の傾向はがラッと変わっているような気がするのです。
 日本人は、「〜すべき」というような教え方を普段されていないし、そういう発想にものすごく抵抗感があるような印象があるから。
 
 だって、大学入試の国語の問題でも「絶対〜すべき」とか「必ず〜である」っていう選択肢は、必ず×だもんね。