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2004年02月16日(月)
日本テレビ「サブリミナル放送」の傲慢

毎日新聞の記事より。

【日本テレビのバラエティー番組「マネーの虎」のオープニングで、1万円札の福沢諭吉の顔を一瞬挟み込んだ「サブリミナル(潜在意識下)的表現手法」の疑いがある映像を流していたことが15日、分かった。この手法は日本民間放送連盟(民放連)の放送基準で不適とされており、同局は「サブリミナルではないが、疑念を持たれるようなものはやめる」として9日放送分から削除した。

 日テレ広報部によると、挿入した時間は0.2秒(30コマ中の6コマ)で、同部は「プロデューサーは『お金を印象づけるためで、サブリミナル(効果)を狙う意図はなかった』と話している」としている。

 サブリミナル的表現手法では、89年12月に日テレ系列で放送されたアニメ番組に物語と関係ないオウム真理教(アーレフに改称)の松本智津夫(麻原彰晃)被告の顔写真などを挿入▽95年5月にTBSの「報道特集」に松本被告の顔写真などを挿入したことが社会問題となった。アニメ番組では「遊びの発想で」、報道特集では「テーマを際立たせるため」とされたが、民放連は98年にサブリミナル的表現手法に関する規定を設けた。

 サブリミナル効果

 視聴者が認知できないほど短い時間に繰り返し映像を流すこと。映像が潜在意識下に残るなど人間の体に影響があるとされている。

 この映像を見た稲増龍夫・法政大教授(メディア論)の話

 これは編集上、意図的に挿入したものだ。視聴率を上げる目的など、制作者が自らに有利な行為や感情を視聴者に誘発しようとしたわけではなく、遊び心からだと思うが、いかに弁明しようともサブリミナルに間違いない。制作者には編集技量を誇示したい気持ちがあったのかもしれない。】

参考リンク:「Mainichi INTERACTIVE余禄」(アメリカ大統領選挙でのサブリミナル騒動について)

〜〜〜〜〜〜〜

 日本テレビ、大丈夫なんでしょうか?
 最近ずっと視聴率トップを走っている同局ですが、先日の視聴率操作男にしてもそうですが「視聴率を稼ぐためなら、何をやってもいい」と考えている人間が多いのでは?

 「プロデューサーは『お金を印象づけるためで、サブリミナル(効果)を狙う意図はなかった』と話している」らしいのですが、その「お金を印象づける」という意図が「サブリミナル」なわけですから、詭弁にもなっていない詭弁としか言いようがありません。そりゃ、確信犯に決まってます。

 僕のサブリミナル効果に対する知識というのは結構曖昧なもので、中学生くらいのときに「映画館で上映中に『コーラを飲もう!』という観客が気がつかないような短い映像をところどころに挿入したら、売店のコーラの売れゆきが良くなった」というようなエピソードを耳にして、「そんなことがあるのか!」と驚いたのが最初でしょうか。
 大学の社会学の講義(今から15年くらい前)では、ブライアン・キイという有名なメディア学者の「メディア・セックス」という本がテキストのひとつとして取り上げられたのを記憶しています。その本の内容は、僕にとってはすごく衝撃的で、多くの広告には、サブリミナル効果を狙った性的なメッセージが挿入されていて(ウイスキーの瓶に『sex』と刻印されていたり、広告の中に性器の絵が隠されていたり)、われわれは無意識のうちに情報操作されているのだ、というものでした。
 もっとも、これは今となっては「考えすぎ」という感じで、いわゆる「トンデモ本」の範疇に入ってしまうようですが。まあ「人面魚」みたいに「そう思い込めば、なんでもそんなふうに見えてくる」という面はありますしねえ。ただ、「セックス・アピール」というのが人間にインパクトを与えるというのは、事実ではあるような気はします。
 僕たちに熱く「メディア・セックス」の内容を語ってくれた先生、今頃どうされているんだろうなあ。

 現在では「本当にサブリミナル効果というのはあるのか?」という点にも異論が多いようなんですけどね。

 しかし、それはそれとして、テレビ番組でこんなことをするのは、少なくとも視聴者にとっては何のメリットもないことです。お金のイメージ映像のサブリミナル効果で、「マネーの虎」の視聴率が上がったかどうかはともかく(今年の3月に打ち切りになるらしいですから、「劇的な効果は無かった」というのは間違いなさそうですが)、テレビを使ってこういう「実験」を試みるということ自体、視聴者をバカにした行為です。

 ところで、この文章を書いていて非常に困ったことがあったのです。
 それは「Google」で検索しても「サブリミナル(効果)」について書かれている、ある程度公正な視点でわかりやすく書かれたサイトあるいはページというのが、絶望的にまで見つからなかった、ということ。
 一見わかりやすそうに書いてあるところは、「サブリミナル効果」を謳い文句にした商品の宣伝サイトだったり、個人的な思い込みと偏見をいかにも「既成事実」であるように書いているサイトだったり。
 インターネットは便利ではあるのですが、考えて使わないと圧倒的な情報に「洗脳」されてしまう可能性もあるなあ、と痛感しました。