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2004年02月05日(木)
「投票で決めればいい!」って言われても…

河北新報の記事より。

【財政難に悩む青森県今別町は、職員給与削減案を全職員の投票によって選ぶことを決め、現在、2つのプランから選択する決選投票を受け付けている。「痛みを分かち合うなら、できるだけ職員の希望に沿う格好で」と決めた措置で、「当選」したプランは条例改正案として町議会に提案される予定。町総務課は「職員全員の投票で給与カットの方法を決める自治体は、ほかにないだろう」としている。

 投票の対象となっているのは(1)基本給2―5%減、ボーナスに当たる期末勤勉手当一律35%減(2)基本給3―6%減、ボーナス一律30%減―の2案。3日から投票を受け付け、5日締め切られ、6日に開票される。

 町では先月末、この2案に(3)基本給4―7%減、ボーナス一律25%減(削減額は約1億400万円)―を加えた3案で全職員115人を対象にしていったん投票を行った。しかし、過半数を獲得した案がなかったため、(3)案を除いた上位2案による決選投票に持ち込まれた。

 町は(1)案で年間約1億1300万円、(2)案で約1億900万円の支出削減につながると試算した。
 町職員組合は「投票結果を尊重し、今後の町側との交渉で細部を詰めたい。削減は反対だが、やむを得ない面もある」としている。

 町は2002年度決算で2500万円余の実質単年度赤字を計上し、経常収支比率が100%を超えるなど財政硬直化が深刻化している。昨夏ごろから、再建策を検討する中で、職員投票に削減案決定のアイデアが浮かんだという。】

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 投票で決めるなんて、民主的な自治体だなあ、なんてちょっと感心したのですが、よく内容を読んでみると、これって、わざわざ投票するようなものなの?とか考えてしまいました。
 「朝三暮四」という有名なことわざを思い浮かべたりして。
 「朝三暮四」というのは、猿回しが経済的に苦しくなって、ある朝、飼っている猿たちに「これからお前たちの餌の木の実を朝3個、夕方4個にしようと思う」と告げたら猿たちは大騒ぎ。そこで、「わかった、朝4個、夕方3個にしよう」と訂正したところ、猿たちは大喜びした、という話なのですが、まとめると「目先の利益に惑わされて、大局的な損得勘定ができないこと」という意味なのです。
 この自治体の投票内容ですが、要するに削減額はほとんど同じで、「基本給とボーナス、どちらの下げ幅をより大きくするか?」ということなんですよね。「どうだ、選ばせてやるぞ、民主的だろ?」なんて言われても、どれもあまり嬉しくない選択肢、ですよね。しかも、選択の幅が狭いし…
 一方が給与削減の替わりに労働時間が減る案、とか「給与は今までどおりで、リストラを進める案」とかだったら、「選択する意味」も大きいのでしょうが。

 そういえば、国会議員の選挙というのも、僕にとってはそんな感じのことが多いのです。「どっちも選びたくないのに、投票しないといけないの?」というような脱力感。
 この「給料削減投票」も、発案者以外は「どうでもいいよ、どうせ給料減るんだし」って雰囲気だと推察するのですが。
 「投票で決める」ということになっているけれど、実際は選択肢に幅がない、という状況は、けっこういろんなところでみられる悲劇なのです。

 ところで、僕がこのニュースで驚いたのは、(3)の削減額が最も少ない案が、まず落ちてしまったことです。考えようによっては、「いちばん給料が減らない案」なのに。おそらく、基本給が減ってしまうことに抵抗があったのでしょうけど。

 まあ、現在では、「朝三暮四」というのは、笑えない発想なのでしょうね。
 だって、朝のうちにもらっておかないと、夕方になる前に会社が潰れるかもしれないし…