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2004年01月11日(日)
「ヒマだなあ」と感じられなくなった人間たち

「ファミ通」(2004.1/23号・エンターブレイン)の浜村弘一さんのコラム「浜村通信」より。

【4人集まって『マリオカート』を必死でプレイしている子供たち。レース中は必死で画面に見入っている。しかし、誰かが勝って、その順位とポイントを表示するデモ画面になると、急にてんで、勝手なことを始める。ゲームボーイで『ポケモン』を進めたり、コロコロコミックを読みふけったり。でも、それでいてしっかりレース中の感想を述べあっているのだ。「ゴール直前で赤甲羅発射したの誰だよ?むかつくー」やがて画面からレース開始を知らせるファンファーレ。子供たちはおのおの興味の対象を床に放りだし、コントローラーを握り、スタートダッシュのためにAボタンを連打し始める。ゲーム中、ずっとこのサイクルを繰り返している。なにもこれが特別なことではない。いつものように日常のゲームスタイルをくり返しているのだ。ゲームを遊びながら、合間にマンガを読み、友達との会話も楽しむ。一度に多くの情報を並行して処理しているのだ。】

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 このあと浜村さんは自分のことを振り返ってみて、子供だけのことではなく、「ネットワークゲームをやりながらチャットをしたり、メールの返事を書いている自分」に気がつくのですが、この話、僕も自分で心当たりがあったので、すごく印象に残りました。
 「トイレで新聞を読む」なんていうのはさておき、人間の情報処理能力というのは、この情報過多の社会に適応するために、飛躍的に上昇しているのではないか、なんて思ったり。
 僕自身は、もともとの性格もあるのですが、最近は「ヒマだなあ。やることないなあ」なんて感じたことがないような気がします。
 「やらなきゃいけないことはあるんだけど、今はやりたくないなあ…」と思うことは結構あるんですけどね。
 確かに、ゲームにしても、「何十時間もかかる、超大作RPG」よりも、短時間にできるパズルゲームや「ダービースタリオン」のような育成ゲームを選びがちです。
 そして、僕も高校や大学のときに「ダビスタ」をやりながら、ずっと本を読んでたんですよね、そういえば。まさにBGMのように。
 それでいて、ゲームの肝心な場面は見逃すことはなかったような気がします。
 ただ、その方法だと、情報誌やエッセイを読むことは可能でも、ストーリーをしっかり追わなければならないタイプの小説を読むのは、確かに厳しかったような。

 今は携帯電話のiモードなどもできて、僕はちょっとした時間についつい携帯をカチャカチャやりたくて仕方がなくなるのです。道を歩きながらとか、電車の中でとか。
 ああいうものが無い時代は、本でも読むか、手持ちがなければ中吊り広告でも眺めながら考え事でもするしかなかったのに。

 最近「自分が手持ち無沙汰であることに耐えられない」というのを実感することが多いのです。30過ぎると、自分に何かをインプットしていくために残された時間がどんどん減っていくような気がしますし。
 「何もしない」ということに、非常にストレスを感じるのです。
 でも、実際にやることはネットを徘徊したり、地域情報誌で行くはずのない店の情報を仕入れたり、なんてこと。

 僕が子供の頃は、夜というのは本当に「何もすることがない時間」でした。テレビの放送時間が終わってしまえば、本を読むか、せいぜい深夜放送を聴くくらいのもので。
 でも、そんな暗くて何もない世界で、いろんなことを考えたような気もするのです。もちろん、「死んだらどうなるんだろう?」とか、あまり気持ちのいいことではないことが多かったのですが。

 でも、現代では、テレビがなければビデオを観ればいいし、ゲームだってあります。さらに、ネットは不夜城です。
 これだけやることがあれば、たぶん「何もすることがなくて自分で考える時間」というのは、どんどん減っていくのではないでしょうか?
 そして、本質的ではない、うわべだけの知識が、どんどんインストールされていく。
 「映画は映画館で観たほうがいい」というのは、単に画面の大きさや音のよさだけではなくて、「映画に集中できる(せざるをえない)環境」という要素も大きいのです。家でビデオ観てたら、電話がかかってきたり、一時停止してコーヒー注ぎに行ったりしてしまいますし。

 どんなに情報処理能力が増しても、人間の「情報欲」というのにはキリがないものだなあ、とつくづく思います。ほんと、ネット上の知識の大部分は、「生きていくためには全く必要がない知識」なのに。
 
 「人間のようなコンピューター」ができるより、「人間がコンピューターになってしまう」ほうが意外と早いかもしれませんね。

 それとも、これが「ニュータイプ」なの?