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2004年01月08日(木) ■ |
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「芥川賞」は若い女性作家に有利なのか? |
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共同通信の記事より。
【第130回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の候補作が8日、発表された。 芥川賞候補5人のうち綿矢りささんは19歳、島本理生さん、金原ひとみさんは20歳と、異例の若い顔触れになった。この3人の女性から受賞者が出れば、史上最年少となる。選考委員会は15日夕、東京・築地で開かれる。 両賞の候補作は次の通り。 【芥川賞】絲山秋子「海の仙人」(新潮12月号)▽金原ひとみ「蛇にピアス」(すばる11月号)▽島本理生「生まれる森」(群像10月号)▽中村航「ぐるぐるまわるすべり台」(文学界12月号)▽綿矢りさ「蹴りたい背中」(文芸秋号) 【直木賞】江国香織「号泣する準備はできていた」(新潮社)▽京極夏彦「後巷説百物語」(角川書店)▽朱川湊人「都市伝説セピア」(文芸春秋)▽馳星周「生誕祭」(文芸春秋)▽姫野カオルコ「ツ、イ、ラ、ク」(角川書店)】
<参考リンク> ・芥川賞受賞者一覧(文藝春秋)
・直木賞受賞者一覧(文藝春秋)
・芥川賞・直木賞の重み(YOMIURI BOOKSTAND)
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僕は綿矢りささんや島本理生さんの作品の熱心な読者ではないので(というか、彼女たちの作品の装丁は、ある意味僕のような30男を拒否しているような気持ちにすらなるので、ほとんど手に取ったこともないです、すみません)、個々の作品についての論評はできないのですが、それにしても、これはある意味異様な現象ではあると思います。 5人のうち3人が20歳以下の女性、というのは、ちょっと偏っているなあ、と思わざるをえません。 まあ、彼女たちが(ビジュアル面も含めて)稀有な才能を持った作家であることはまちがいないでしょうし、「若すぎる」というのも、上記参考リンクを見ていただければわかるように、芥川賞は「新しい才能を発掘する場」ですから、否定材料にはならないのだろうけど。受賞者も多種多様で、直木賞に比べたら「話題性・将来性重視」の傾向はあるようです。 村上龍さんのように、受賞したあともコンスタントに活躍して(という基準が、「売れている」というようにしか評価しようがない面もあるにせよ)いらっしゃる方もいれば、今となっては、「この人誰だったっけ…」というような方もけっこう多いのです。
おそらくこういう「若年化」の背景には、ネットの普及などで、比較的若い時期から「他人の自分の文章を公開する機会」が与えられるようになったという面も大きいのでしょう。それまでは、学校の文芸サークルなどで仲間内で批評しあうくらいだったのが、多くの人の目にさらされる可能性を得たわけですから。もっとも、「ネット上に書きさえすれば、たくさんの人が見てくれる」というのも幻想なんですけどね。
綿矢さんや島本さんがサイトをやっていたか、なんてことは、寡聞にして僕は知らないのですが、少なくとも書く人間の裾野が広がっていることは事実なのでしょう。
ただ、ひとりの文学愛好者として寂しく思うのは、彼女たちの作品の多くは若者向けであり、「小説の世界に読者を引きこむ力」ではなく、「そうそう、こんな感じ、あるある」というような、「読者を共感させる力」に偏っているような印象を受けることです。 このままでは「物語世界」を書こうとする人はいなくなってしまうのではないか、なんて僕は危惧しているのです(もっとも、新人作家は自分で資料集めなどをやらねばならず、必然的に「私小説しか書けない」面もありそう)。
「そういうのは誰も読まないし、売れないんだからどうしようもない」なんて声が、どこからか聞こえてきそうなのですが。ネット上の個人サイトと同じで「女の子の考えていることを覗き見するような感覚」というのは、やっぱり魅力的でしょうしね。
まさか、出版業界的には、「若くてかわいい女の子じゃないと、職業作家としてデビューさせられない」というような状況で、実は今回のノミネートが特殊なんじゃなくて、もともと新人作家の半分以上が若い女の子だったりして…
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