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2003年12月12日(金)
ソニーの「超小型デジカメ」にみる、「こだわりの逸品」の明暗

毎日新聞の記事より。

【ソニーは11日、家電製品「クオリア」シリーズの超小型デジタルカメラ「QUALIA(クオリア) 016」(38万円)に不具合があり、9月末までに販売した133台を無償で修理していることを明らかにした。6月に発表したクオリアは「“感動価値”の創造」を掲げた超高級家電シリーズ。エンジニアのこだわりや技術の粋を注いだだけに、ソニーは「お恥ずかしいとしか言いようがない」と話している。

 ソニーによると、あるタイミングでシャッターを押すとフラシュが光らなかったり、液晶パネルが表示しないなどの苦情が寄せられ、原因を調べたうえで10月末から修理を始め、大半を終えたという。

 このカメラは最新技術を使って、大人の親指大ほどのサイズに抑え、手触りやデザインにもこだわり、受注生産で販売していた。】

参考リンク「ソニー、38万円の超高級デジタルカメラ」(ZDnet)

〜〜〜〜〜〜〜

 この「超高級デジカメ」が実際にどんな製品なのかは、参考リンクを御参照下さい。
 僕は、このデジカメの存在自体を知らなかったのですが、こうして見てみると、確かに魅力的な製品ではありますね。メカ好きにとっては、「世界最小!」とか「世界最速!」なんて売り文句は、かなり心に響きますから。
 しかし、この38万円の超高級デジカメ「クオリア016」なのですが、今年の6月24日に受注生産を開始してから、約3ヶ月で売れたのは133台(おそらく、受注生産ですから、数字はかなり正確なものだと思います)。
 これを「けっこう売れた」ととるか、「あんまり売れなかったんだなあ」ととるかは人それぞれなのでしょうけど、開発費などを考えると、この売り上げでは、どう考えても、「将来的な技術への先行投資」というメリットを考えなければ大赤字でしょうね。
 まあ、「200万画素のデジカメ」と考えれば、今では3万円もあれば、かなり立派なものが買えますから、よほどのコアユーザーでもないと買わない商品だと思います。50グラムという重さは凄いけど、じゃあ、今現在持ち歩いているデジカメがそんなに「重い」かと言われると、「ちょっと邪魔」くらいの意識はあっても、そんなに切実に困っているわけでもないから、10倍の値段のものを買おうとは思わないですよね。
 むしろ、「どんな人がこれを買うんだ?」と思ってしまうくらいです。
 この商品のメリットは、「小ささ」と「軽さ」そして手触りにまでこだわったという「高級感」なわけですが、実際に使ってみれば「あんまり小さすぎる機械は、かえって使いにくい」ということも多々ありますし。

 まあ、それはさておき、僕自身はこういう画期的な製品は大好きなのです。
 でも、こういうものには、リスクがつきものではあるんですよね。

 僕の友人は、某輸入車に乗っているのですが、そろそろガタがきているその車のメンテナンスは大変みたい。オイル交換をしようとスタンドに行けば、「日本の車と構造が違っていてわからないから、ディーラーに行ってくれ」と言われ、ブレーキランプが切れたからとオートバックスに行けば、「うちにはこの型のランプはないので、ディーラーに行ってくれ」と言われ…
 一事が万事この調子で、けっこう本人も参っているようです。
 ディーラーに行っても、田舎ですから「取り寄せになりますから、しばらくお待ちください」ということになりますし。
 こういうのは、カローラとかフィットみたいな「みんなが乗っている車」なら、そこらへんのスタンドで、簡単にやってもらえるはずのことなのに。

 「他人と違うものを持つ」というのは、カッコいい感じはするのですが、その一方で、こんなふうにデメリットも少なくありません。
 超高級外車を乗り回している人だって、たぶん、いいことばかりじゃないはずです。
 「個性を主張する」というのには、それなりの覚悟が要るのかもしれませんね。

 僕も、この「超小型高性能カメラ」って、「いちばん『使える』のは、『盗撮』なんじゃないの?」などと勘繰ってしまいもするわけで。
 新しいものが社会に受け入れられるのは、なかなか難しいなあ。