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2003年10月19日(日) ■ |
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井上陽水の「お元気ですか〜?」が消された時代 |
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「90くんところがったあの頃」(大槻ケンヂ著・角川文庫)より。
【昭和天皇のご容態が悪くなり、ついに崩御、大葬の礼が行われてから即位の礼までの約1年半。’89年から’90年、唱和から平成に年号が変わったこの間、日本は国を挙げての自粛ブームとなった。陛下が苦しんでおられるのに国民がニコニコしちゃいかんだろうというのが理屈である。 とにかく街からニコニコが消された。テレビからラジオからニコニコ成分のあるものは排除された。井上陽水がニコニコしながら「お元気ですか〜?」と問いかける車のCMまでが音声をカットされた。するとCMは陽水さんがニターと笑いながら口を金魚のようにパクパク開閉するのみという極めて不条理な映像となり不気味この上なかった。音声カットせんほうが自粛していたような気もするのだけどどうでしょう? 崩御当日の街の自粛を朝日新聞はこう記している。 「パチンコ店やゲームセンターもネオンを消し、軍艦マーチなどの音楽は一切禁止。(中略)ダンスホールやディスコは軒並みに営業中止で、居酒屋やバー、ピンクサロンなどは休む店も多い」 まるでゴーストタウンである。】
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なんだか、今となっては、懐かしいというか、バカバカしい話だったような気がします。あの「自粛ブーム」って。 例の井上陽水さんのCM(確か「セフィーロ」という車だったと思う)の「お元気ですか〜?」は、自粛されたことによって、かえって有名になりましたし。 その「口パクになったCM」は、確かにものすごくヘンでした。 あのときは、各地でお祭りやイベントが次々と「自粛」たのですが、僕が当時住んでいたところの大きなお祭りは、「陛下の快癒を祈念して」開催されることになりました。 それでも、「どうしてこんな時期にお祭りをやるんだ!」というような批判は、あんまり出なかったような記憶があります。 結局、ものは言いよう、というか、みんな「そんな『自粛』に何か意味があるの?」とか思いながら、なんとなく周りの雰囲気に押し流されていたんでしょうね。 実際、そのときの陛下が「歌舞音曲」をやめるよう望んでいたという事実はありませんし、病室のすぐ近くとかならともかく、別に下界で何をやっていようが、病勢に関係なかったと思うのですが。
そういえば、僕はそのときちょうど高校の寮で生活をしていたので、世間の様子はいまひとつわからなかったのですが、それでも、「別に、現在病気とかで苦しい目にあっているのは、陛下だけじゃないだろうになあ」と感じていたような記憶があります。
そういう「自粛」なんてのは、むしろ「自粛する側の都合」でしかないわけで。 だいたい、普通の人間は、身内が病気で臥せっていても、「自粛」どころか生きるために稼がないといけないことが多いんですよね。 「自粛」なんて、やってられない。
あの時代は、みんな「自粛ムード」に酔っていただけなのかもしれません。 今となっては、思い出すのは陛下が崩御されたあと、ずっとテレビが特番だらけで、それに飽きた人々でレンタルビデオショップが大流行りだったことくらいなのですけど。
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「いやしのつえ」は通常営業。
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