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2003年10月10日(金)
皇帝シューマッハの最後かもしれない鈴鹿。

ロイター通信の記事より。

【自動車レース、フォーミュラワン(F1)のミハエル・シューマッハー(ドイツ、フェラーリ)が、週末に行われる今季最終戦の日本GPで6度目の総合優勝が決まった場合、引退はしないと明言した。
 シューマッハーは「自分に競争力がある限り、引退を考える必要はない。要は単純にこのスポーツが好きだからで、正直なところ、好きなことをするのは最高だ」と語った。
 引退説については、先週マネジャーのウィリ・ウェバー氏も否定。同氏は、2006年の契約満了まで現役で活躍するとの見方を示した。
 総合首位のシューマッハーは、先月28日の米国GPで優勝。2位のキミ・ライコネン(フィンランド、マクラーレン)との差を9ポイントに広げた。
 日本GPであと1ポイント加算すれば、史上最多となる6度目の王座獲得が決まる。】

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 僕のF1の歴史は、アイルトン・セナとマクラーレン・ホンダから始まりました。当時、この組み合わせは圧倒的な強さを誇っていたものです。一時は、セナとプロストがチームメイトで、激しくやりあたりもしていましたが。
 日本でF1ブームが起こったのは、中島悟がロータスで日本初のフルタイムF1ドライバーになってからなのですが、そのころ(今から十数年前)の日本のF1ブームといえばすごいもので、鈴鹿の日本GPのチケットは入手不可能といわれ、多くの雑誌ではF1がとりあげられていました。
 中でも、「週刊少年ジャンプ」は、日本でのF1の普及に大きく貢献してきたものです。
 自らマクラーレンのスポンサーにもなっていあしたが、車体に貼られた「ジャンプ」のステッカーがあまりに小さいので(それでも1億円くらい払った、という噂)、笑いのネタにされたりもしたのですが。
 
 そういったF1ブームの中で、とくに日本人に愛されたのが、「音速の貴公子」こと、アイルトン・セナでした。セナは、その天才的なドライビングテクニックと、レーサーとしてはやや不釣合いなほどのナイーブな感性を持ったドライバーでした。
 勝利を確信さいていたレースでささいなミスをおかしてリタイアしたと思えば、ほとんどギアを失った状態でマシンをコントロールし、奇跡の優勝を遂げたレースもありました。
 その憂いに満ちた表情と繊細さで、彼は、日本でも大スターになったのです。
 僕はそんなセナがあまり好きになれず、ずっとプロスト派だったわけですが。
 セナが「神を見た!」といえば、選民思想かよ…とか思ってましたし。

  亡くなったときセナはちょうど34歳。ドライバーとしては円熟の域に達しており、当時最強といわれたウイリアムズのシートを手に入れ、僕たちは、しばらくセナの時代が続くことを予想していたものでした。
 セナが事故で亡くなったとき、ミハエル・シューマッハは、まだ「セナを脅かす、若き天才ドライバー」という位置づけでした。
 セナの事故死には、現在でもさまざまな憶測が流れていますが、結局、セナがいなくなってしまった、ということだけが事実だったのです。

 中島悟の引退に続く、F1最大のスターであるセナの事故死により、僕のF1熱は急激に醒めていったような気がします。ちょうど、その時期に僕は病棟実習に出るようになり、それから研修医になって、夜更かしが許されない生活を送ってきたこともあるのですが。

 皇帝ミハエル・シューマッハーは、セナがいなくなってしまったあとのF1界をずっと背負ってきました。その圧倒的な強さは、「面白くない」と僕たちが思ってしまうほどで。
 彼のライバルであったミカ・ハッキネンは、若くしてF1から引退してしまいましたし。

 今年のシューマッハは、ちょっと違っていました。
 開幕戦から絶不調で、信じられないようなトラブルに見舞われていました。
 「皇帝」も、もう限界なのでは…と囁かれていたのも事実です。
 しかし、シューマッハは蘇りました。レース決勝当日の朝に、最愛の母親の訃報を聞いたにもかかわらず、その日のレースで先頭でゴールに入りました。
 それから、順調にポイントを重ね、ついに、6度目のワールドチャンピオンに王手をかけて、鈴鹿にのりこんできたのです。

 「ワールドチャンピオンを決めたら、引退しない」
 裏を返せば、もしチャンピオンになれなかったら、引退するの?という気もしますが、現在の合計ポイントでは、逆転される可能性は、シューマッハ0ポイントで、しかも2位のライコネンが優勝、という状況しかありません。
 もちろん、F1の世界では、今までにも最終戦での信じられないような逆転劇がありますし、皇帝シューマッハも油断してはいないと思うのですが。

 いつのまにか、僕は自分がシューマッハを応援していることに気がつきました。
 若いドライバーに追いつかれそうになりながらも、意地を見せ続ける皇帝。
 そういえば、現在34歳のシューマッハは、ちょうどセナが亡くなったのと同じ年齢になったのですね。

 「歴史は繰り返す」と人間は言い伝えてきました。
 F1界の世代交代の波にたちはだかる、皇帝シューマッハ…
 僕の中では、彼は「音速の貴公子」という巨大な壁に立ち向かう若き天才だったはずなのに。

 シューマッハが、2006年まで現役を続けるのかは、正直、わかりません。
 というより、そんな先のことまでは考えていない、としか言いようがないでしょう。

 ただ、「まだまだ若い連中には負けるな!」とか、なんとなく僕は思ってしまいます。
 友達でもなんでもないのにね。
 そして、その一方で、ムリせずに事故とかに遭わないうちに引退したほうがいいのかな、という気もするのです。

 それにしても、あのシューマッハが「引退」とか言われる年になったとは…
 僕の中では、まだ「若き天才」のままなのになあ。

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