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2003年10月08日(水)
松たか子とスティービー・ワンダーと先入観と。

「シティ情報ふくおか・No.602」松たか子さんのインタビュー記事より。

【松:小さい頃ピアノを習ってて…、兄と姉が習っているのを真似して始めたんですね。二人は先生が変わった時にやめたんですけど、私は「続けたい」って。その新しい先生がすご〜く厳しかったんですよ。先生が帰った後に血を吐いて倒れちゃって。

 インタビュアー:吐血ですか!?

 松:精神的なものなんですけどね。それで1回やめてたんだけど、スティービー・ワンダーがキーボードを弾きながら歌ってるのを見て、「私はこんなに辛い思いをしてるのに、この人はすごく楽しそうに歌うなぁ。いいなぁ」って。中学にあがる頃にまたやりたいと思って。それからピアノはすごく好きでレッスンをしました。本当は受験して、音楽大学にも行きたいなと“夢”として思ってたんだけど。】

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 「精神的なものなんですけどね」って、このインタビュー内容からすると、小学生以下の子供に「血を吐くほど精神的なストレスを与えるレッスン」っていうことですよね。
 それは、かなり怖いものが…

 松さんは、このインタビューのなかで、スティービー・ワンダーのことに触れられていますが、松さんは僕より6歳下の1977年生まれなんですよね。
 小学校時代にスティービー・ワンダーなんて渋いなあ。
 僕もスティービー・ワンダー大好きなのですが、このインタビューを読んで、ドキリとしてしまいました。
 僕にとってのスティービー・ワンダーは、「目が見えないというハンディキャップを背負いながら、素晴らしい曲を作り続ける偉大なアーティスト」なのです。
 でもね、これって、彼のことを「目が見えないのに」という前提でずっと見ていたのではないかな、って。

 松さんの「楽しそうに歌うなぁ。いいなぁ」というのは、いかにも子供らしいものの見方なのかもしれません。人によっては、「彼のハンディキャップのことも考えずに、能天気に『楽しそう』だなんて…」と、眉をひそめるでしょうし。

 しかし、考えてみれば、「楽しそうに歌う」という以上に、彼のことをうまく形容するのは難しい気がするのです。
 僕たちが、彼のバックグラウンドにばかり思いを馳せてしまうのは、実は、「そんなに楽しいことばっかりじゃないに決まってる」という嫉妬なんじゃないかなあ。

 好きなことを仕事にするのは、すごく幸運で、かつ不幸なことです。
 でも、せめて夢を与える仕事をしている人たちくらいは、羨ましいと思われるくらい楽しそうに仕事をしていてもいいんじゃないかなあ、と感じるのです。

 何に対しても、その舞台裏を考えすぎ、かえってその本質を見失ってしまうことって、けっこうよくあるような気がします。


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