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2003年10月06日(月)
巨人・川相選手の現役続行と「引き際」の難しさ

スポーツニッポンの記事より。

【今季限りでの現役引退を表明した巨人の川相昌弘内野手(39)が5日、都内のホテルで巨人・三山秀昭球団代表(56)と2度目の話し合いを持ち、2軍内野守備コーチへの就任要請を正式に断り、現役続行の意思を伝えた。原監督辞任後の不誠実な球団の対応に対する不信感は根強く、同選手は他球団への移籍も視野に入れており、翻意は困難な状況だ。】

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 最初にこのニュースを聞いたときの第一印象は、率直なところ
「えっ、いまさら現役続行?この間引退セレモニーやってたのに…往生際悪いなあ」
 というものでした。
 今年犠打(主に送りバント)の世界記録を達成した川相選手は、現在39歳。
 堅実な守備も魅力の大ベテランです。
 もし彼が来年も現役を続けるとしたら、そこらへんの若手よりは余程戦力になると思うのです。僕は巨人嫌いですが、今年バント失敗が目立ちまくった某チームのファンとしては、ここぞというところで確実に送りバントを決めてくれる選手の存在は、すごく羨ましい気がしましたし。
 実際、簡単なようで、誰もがバントだと思う場面で(しかも、川相選手が出てくればなおさら、ですよね)、きっちりバントを決めるというのは、すごく難しいことだと思います。まさに職人芸。

 ただ、彼の年齢と現在の年俸(約9000万円らしいです)を考えると、傍目でみれば「まあ、引退するのに適切な時期なんじゃないかなあ」いう印象だったのですが。
 おそらく、仮に現役を続けるとしてもあと1年か2年といったところでしょうし、チームの将来を考えたら、若手を起用していくという方針は妥当なところです。ここ数年は、レギュラーでフル出場、というわけでもなかったし、あと少しで達成できる大記録があるわけでもないみたいだし(本人は、「40歳での現役」にこだわりがあるみたいですが)。

 言葉は悪いけど、僕には「川相選手、ちょっと勘違いしているのでは…」とも思えたのです。
 彼はチームの功労者ですが、監督問題でチームがゴタゴタしているときに「自分の処遇について連絡がなかった」とか言われてもねえ…
 「それどころじゃなかった」というのが、球団側の本音なんじゃないでしょうか?
 もちろん、ちょっとした気配りが球団側にあれば、この事態は回避できたのかもしれませんけど。

 しかし、考えてみると、川相選手の今回の「現役続行」発言って、本人にとっては、何のメリットも無さそうな気がします。
 たった1年か2年(現実的にはそんなものでしょう)現役を伸ばせたとしても、今回の件で「トラブルメーカー」のレッテルが貼られることは間違いないし、黙って引退してコーチになるか、仮にコーチになれなくても巨人というチームのブランドとコネで野球解説者になったほうが、将来的には絶対プラスになるはずです。

 彼の年齢や高年俸を考えると、他球団が積極的に獲得しようとする可能性は低いでしょうし。
 いや、そのことは、本人もよくわかってはいるんだろうけど。

 野球選手のように、「定年がない、実力主義の世界」というのは、不思議なものですね。現役にこだわるベテランの陰では、誰も名前を知らない、まだ若い選手が「戦力外」として本人の意思とは関係なくクビになっていくのです。
 むしろ、自分で「引退」を決められる選手のほうが稀有な存在。

 医者というのも定年がない世界なので、中には、こちらが心配になってしまうような御高齢の医師もいらっしゃいます。
 医者というのも、なかなか「引退」できないんですよね。
 今までの経験もあるし、まだまだ若い者には負けない、と思ってしまう。
 もちろん、こちらが驚くほどアッサリとした引き際を見せる人もいるのですが。

 今回の騒動に、僕は「人間の『現役』への執念」みたいなものを見せられた気がします。
 「球団への不信」というのは後付けの理由にすぎず、川相選手の心の中には、現役を続けたいという気持ちがずっとくすぶっていて、今回の監督退任騒動を契機に、その執念に負けてしまったのではないか、と。
 原監督退任劇がなければ、現役に未練を残しながらも無事引退し、コーチをやりはじめてしまえばそれなりにコーチ業の面白さに目覚めていたのかもしれなかったのに。

 その「あと1年」のために、「去年引退しておけばよかったのに…」と言われる人のほうがはるかに多いと知っていても、人間って、自分だけは例外だと信じてしまうものなんでしょう。

 僕の本心としては、年俸安くていいなら、われらが広島カープに移籍して、あのバント失敗軍団に、バントのやりかたを教えてもらいたいんですけどね。

 本当に、「引き際」ってやつは難しいです。
 とくに、それが自分の「引き際」となると…


 追記:川相選手の自由契約が今日の夕方、発表されました。

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