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2003年09月14日(日)
「敬老の日」が廃止されるかもしれない時代

共同通信の記事より。

【5人に1人が高齢者−「敬老の日」にちなんで総務省が発表した統計調査によると、15日現在の65歳以上の人口(推計)は昨年より71万人多い2431万人で、総人口に占める割合も19・0%となり、人数、割合ともに過去最高を更新した。
 男性は1026万人(男性人口の16・5%)で、初めて1000万人を超えた。女性は1405万人(女性人口の21・5%)。75歳以上は、昨年より51万人増え1053万人となったが、男性384万人に対して女性が669万人と男性の1・7倍だった。
 日本の65歳以上の割合は、イタリア18・2%(01年)、ドイツ17・1%(同)フランス16・1%(03年)など欧米諸国を上回った。1990年ごろは各国を下回っており、日本の高齢化は急速に進んでいる。】

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 日本の高齢化社会は、本当に急速に進んでいるみたいです。
 病院で働いている人間にとっては、65歳なんて、まだまだ若いというのが実感なのですが(それも科によって違うとは思うのですけどね)。
 もちろん、人間にとって命はもっとも大事なもののひとつですから、長生きできるようになった、ということは素晴らしいことだと思うのです。
 でも、その一方、いろいろな歪みが生じてしまっていることも事実で。
 
 高齢者の介護の問題にしても、最近では、90歳の親に60歳の子供、なんてケースは、けっして珍しいことではないのです。
 「お年寄り」が「お年寄り」を介護しなくてはならない時代。
 それにもかかわらず、法制度の改正により、病院では経営上長期療養が難しくなってしまい、高齢者は家族が世話をしていかないといけなくなっているわけです。
 「家族なんだから、自分の親の世話くらいするのが当然」
 それは、確かに「正論」ではあります。
 しかし、その「正論」のために、自分の人生を犠牲にして、親の介護をしなくてはならない人も、どんどん増えてきているのです。
 親の介護をしている間に自分も年をとってしまい、解放されたら、すぐに自分が介護される順番…
 こうなってくると、高齢化社会というのは、けっして人間の「実際の寿命」が長くなっているわけではないんじゃないか、とすら思えてきます。
 「病院は冷たい」なんて言われますが、実際のところ病院だって経営的にはいっぱいいっぱいで、これ以上自分の足を食べて生きていくわけにもいかない状況なのです。

 そして、人口構成がこうなってしまった以上、60歳代の人を「年寄り」扱いしていられなくなってもいるんですよね。それは、年金問題などでも明らかなことで、これからの日本は、どんどん高負担で低福祉の状態にシフトしていかざるをえないでしょう。「人間を長生きさせるための医療」に対するコスト制限も厳しくなっていくでしょうし。
 そのことを社会問題として認識していたとしても、自分の身内の生死となると、それはまた別の話。できるなら長生きしていたいのが人情でしょう。

 ところで、この「5人に1人」という数字に、実感がわいてこない人もけっこう多いのではないでしょうか?
 そう、病院の中や田舎のように、若者の目にふれないところに、お年よりは集まってしまっているのです。そして、若者は高齢化社会を実感できず、日頃は新聞の記事を読んで「ふーん」と思うだけ。
 そして、自分の親の介護が必要になったときに驚愕する…

 実は、そういう「お年寄りが隔離されている状態」というのが、今の日本のいちばんの問題なのかもしれませんね。
 5人の中に1人のお年寄りではなくて、お互いにあまり交流がない、100人のお年寄りのコミュニティと400人の「若者」のコミュニティ。

 「お年寄りを敬う」という「敬老の日」は、果たして、いつまで続けていけるのでしょうか…