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2003年07月08日(火)
「ブッシュマン」を知らない若者たち。


日刊スポーツの記事より。

【映画「ミラクル・ワールド ブッシュマン」シリーズで世界的に有名になったニカウさんが4日までにアフリカ南部ナミビアで死去した。59歳ぐらいとみられる。

 1日にまきを拾いに出たが戻らず、捜しに出た家族が草原で死んでいるのを見つけたという。

 ニカウさんはカラハリ砂漠に住むサン人(ブッシュマンは蔑称)で、出演した映画「ブッシュマン」シリーズは人種差別的との批判もあったが、ニカウさんの天衣無縫さがうけ、世界的に大ヒット。1981年の第1作から93年の第4作まで作られたが、90年代初頭にアフリカ南部の故郷に帰っていた。】

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 今日、同僚と話をしていたら、ちょうどこの話題になったのです。
 その同僚が、ある看護学校の講義に行って、突然死の話をしていた際に、「そういえば、この間ニカウさんが亡くなったよね。あの人は心臓疾患だと思うんだけど…」とトピックとして取り上げたら、教室中はシーンとしていたのだとか。
 彼は非常にショックを受けて、「ニカウさんを知らないやつらが、もう看護学校に通うようになったのか…」とこぼしていました。
 今の20歳くらいの人たちって、本当にニカウさんを知らないのか…と僕もショックです。

 1981年に、「ブッシュマン」が、はじめて公開されたとき、当時小学生だった僕たちは、あの有名な(って書いても、たぶんみんな「知らねえよ!」とか思うんだろうなあ…)空からコーラの空き瓶が落ちてくるシーンを面白がって真似したものでした。彼らの話す、僕たちにとっては訳のわからない言葉も、もちろん真似して。
 
 この「未開の民と文明との衝突」をコミカルに描いた映画は、日本でも大ヒットして、確かニカウさんは、映画の公開時とテレビ放映時に来日したはずです。
 映画でのコミカルさに比べて、インタビューに答える彼は、非常に真面目で誠実そうな人だなあ、と感じた記憶が残っています。

 一方、この「ブッシュマン」という映画は、「アフリカの部族を差別している!」という非難がけっこうあって(確か、「ちびくろサンボ」とかが差別的だとして焚書になったのも、この時代だったんじゃないかな)、「コイサンマン」になったり、「サン族」と呼ばれたりしました。
 まあ、日本人だって、「イエローモンキー」とかいう映画を作られたら腹が立ちますから、当然の批判ではあるのですが。
 でも、この時期の「差別」に対するあまりに過剰な「焚書」については、今となっては疑問が残るものも存在します。
 僕自身も「差別だよなあ」と思いながら、この映画自体はけっこう面白かったんですよね、困ったことに。

 しかし、二カウさんの「59歳くらい」という推定年齢と草原での死は、「文明人」である僕に、いろいろなことを考えさせてくれます。
 ニカウさんは、映画のプロモーションで、さんざん「文明」に接してきたにもかかわらず、結局は「文明」に染まることよりも故郷の草原で暮らすことを選んだ、ということ、そして、まだ世界には「草原での自然死」が、珍しくない地域がある、ということ。
 僕たちが、「未開」とか「不便」とか思いこんでいる世界って、実は、そこで生きている人たちにとっては、「当たり前の世界」であり「故郷」なんですよね、きっと。

 「文明化」が人間を幸福にするのか?というのは、永遠の命題なのかもしれません。
 とはいえ、僕にはもう、ネットや車なしの生活ができないのも確かなのですが。