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2003年04月19日(土)
「とりあえず意見を表明する」人々。


「ありがとうございません」(壇ふみ著・幻冬舎文庫)より。

【可愛い顔をして、文句ばかり言っている友だちがいる。
 外へ出た途端に、「ウッ、寒い、寒い、寒くて死にそう!」。
 電車に乗ってやっと暖まってきたと思ったら、「ウーッ、暑い、暑くて息ができない!」。
 ある日、見かねて注意した。
 すると、「これはネ、長いことドイツにいたせいなの」と、悲しそうな顔で言う。
 ドイツでは、そのときに感じた不快は、そのときにキチンと言っておくものらしい。でないと、あとで風邪ひいたりしても、「あのときお前は寒いともなんとも言ってなかったじゃないか。言わなかったお前が悪い」っていうことになるのだそうだ。
「だから、私は別に文句を言っているんじゃないの。意見を表明しているだけなの」
 そう言って、「込んでる」「うるさい」「排気ガスで苦しい」と、東京の街で意見を表明し続けている。】

〜〜〜〜〜〜〜

 まあ、これがドイツ生活のせいなのか、彼女のもともとのキャラクターなのかは、よくわかりませんが。
 でも、僕が昔から聞いていたことに、アメリカで交通事故を起こしたときに、どんなに相手に責任があっても”I am sorry“と言ってしまうと、「お前は『自分が悪い』と言ったじゃないか!」ということで、責任を押し付けられるというのがあるのです。
 これが、ほんとうに事実かどうかはわかりませんが。

 それにしても、日本人の感覚で言うと、いつもこんなふうに文句を言う人(「意見の表明」なのですよね)と一緒にいると、とても嫌だろうなあ、と思います。
 そのくらい我慢しろよ、って。
 
 でも、とりあえず「言っとかないと損」という社会も存在するということなんですね。
 そういえば、ドイツという国は、アメリカのイラク攻撃に激しく反対していましたが、戦争が実際に始まると、「アメリカ支持」で、「戦争が早く終わることを期待する」という論調に変わりました。
 僕は、それを聞いて、現実的な選択ではあるけれど、なんだか一貫性がないなあ、と感じたのですが、この話からすると、それも「文句を言ったんじゃなくて、意見を表明しただけ」ってことなんでしょうか。

 「とりあえず意見を表明」する国々と「言わぬが花」の国。
 僕は、「とりあえず意見を表明」する人とは、あんまり友達になりたくないなあ、とついつい思ってしまうのですが。
 ドイツならともかく、ここは日本だ!なんて。
 
 それでも、そういう常識を持った国がある、ということは、きっと頭に入れておかないといけないことなんでしょうね。