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2003年03月26日(水)
素人だったから、僕らはウケないのを客のせいにした。


「哲学」(島田紳助・松本人志共著、幻冬舎文庫)

(松本人志さんが、ダウンタウンデビュー当時、舞台で全くウケなかったことを回想して)

【平日のあの時間帯のあの客に笑いのセンスも、そもそも笑おうという気も、あんまりなかったのは事実だが、僕ら自身にも問題があったのだ。
 なんといっても、まず声が出ていなかった。
 あの頃はたぶん、僕らの喋りがちゃんと聞こえてたのは、前から何列目かのお客さんまでという感じだったと思う。
 素人とプロの違いはいろいろあるけれど、いちばんはやっぱり声の大きさだ。
 素人は喉で喋るが、プロは腹で喋る。
 だから、プロはどれだけ大きな声で何時間喋っていても、喉をつぶさない。そういう喋りが、あたりまえの基本が、あの頃の僕らにはできていなかった。
 要するに素人だった。
 でもそういうことがわからないから、僕らはウケないのを客のせいにしたのだ。】

〜〜〜〜〜〜〜

 ダウンタウンの松本さんの駆け出しの頃の回想なのですが、僕はなるほど、と思いながら、この文章を読んでいました。
 よく「小手先の技術にばかり頼るな」という戒めがありますが、多くの人に何かを伝えようとするときには、技術が必要なことがある、ということなんでしょう。
 漫才であったら、まずネタが面白くなければいけないとか考えがちなのですが、実際の舞台の上では、その内容を伝えるための技術も必要不可欠なんですよね。それは、必要十分条件ではなく、単なる前提条件なのですが。
 僕もこうやって何かを書くときに、正直、うまく伝えられなかったかなあ、と思うときがあるのですが、それは、純粋に内容が未熟であることもありますが、まず言い回しや表現方法、文章のつながりが巧くいっていなかったせいのこともあるのだろうと思います。
 読み手に対して「あなたは、この文章を正しく理解していない!」という前に、自分の文章について、他人にきちんと伝えられるものであるか、ということを確認することが大事なんでしょうね。
 どんな面白い漫才でも、聞こえなければウケようがないのと同じことで。

 もちろん、どんなにいい文章でも、100%の人に理解してもらえるなんてことは、ありえないというのも実感としてあるのですが。

 要するに、ネタを評価される前の時点でずっと躓いているようでは、「自分に才能がない」以前の問題、ということなんだろうなあ…