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2003年03月25日(火) ■ |
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「千と千尋」のアカデミー賞受賞を喜べなかった人。 |
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日刊スポーツの記事より。
【第75回米アカデミー賞授賞式が23日夜(日本時間24日)、ハリウッド・コダック劇場で行われ、宮崎駿監督(62)の「千と千尋の神隠し」が長編アニメ賞を受賞した。 宮崎監督は新作「ハウルの動く城」の製作に集中するために欠席。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーもイラク情勢の悪化を理由に欠席した。 宮崎監督は「(こんな時に)自分のうれしそうな顔が出るのがつらい」と会見には姿を見せず「いま世界は大変不幸な事態を迎えているので、受賞を素直に喜べないのが悲しいです」などとつづった自筆のコメントを出した。】
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アカデミー賞の長編アニメーション部門の作品賞を「千と千尋の神隠し」が受賞しました。 それが発表されたとき、スタジオジブリには、拍手と歓声がこだましたそうですが、宮崎駿監督は、受賞についてのコメントを求められた際にイラク情勢を踏まえて、「世界がこんな状況の中、自分の嬉しそうな顔が出るのは辛い」というコメントを残して、会見は行わなかったということです。 宮崎監督のこの行為は、果たして「反戦的」なんでしょうか? 宮崎駿という人は、戦争を描くことを避けてきた人ではありません。 「風の谷のナウシカ」や近作では「もののけ姫」などは、戦争映画とも言えるでしょうし。 監督自身のお気に入りであるといわれる「紅の豚」では、戦争が終わることによって取り残されてしまった「飛行機乗り」たちのオトコの世界をセンチメンタルに愛情をこめて描いています。 次回作は「戦時下のラブロマンス」らしいですし。 僕は、宮崎監督が「好戦的」だとは思いませんが、少なくとも監督は「戦争」というものがドラマチックであると認識していて、そこで繰り広げられる人間ドラマに興味を持っているのではないかとは感じます。 これは、宮崎監督にだけじゃなくて、僕もそうだし、たぶん大部分の人間は、そういう認識があるんじゃないでしょうか? 100%戦争嫌いの人間は、戦争映画を見るでしょうか? そういえば、僕の知り合いに、「プライベート・ライアン」の最初の戦闘シーンで居たたまれなくなり、映画館を出てしまった人がいるんですが。
宮崎監督の「こんなときに自分の喜んでいる顔が出るのは」というコメントは、裏を返せば、「こういうときでも、やっぱりアカデミー賞受賞という形で自分の作品が認められたことは、やっぱり嬉しい」ということに、自責の念を感じているのではないかなあ。
大部分の人間は、100%反戦なわけではなくて、自分の中の好戦的な部分を隠しながら、「戦争絶対反対!」と唱えていると思うのです。 「戦争っていう特殊な状況にはちょっと憧れるけど、やっぱり自分が巻き込まれるのは嫌だし、弱い人間が死んでいくのは見たくない」 そのくらいが人間の自然な感情だし、反戦の理由として、全然恥ずかしいことじゃないはずなのに。
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