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2003年03月19日(水) ■ |
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テロリストの爪切り。 |
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「アホでマヌケなアメリカ白人」(マイケル・ムーア著・松田和也訳・柏書房)
(同時多発テロ直後のアメリカの空港での状況・括弧内も、ムーア氏によるもの。)
【9月22日までに、俺はまたもや機上の人とならざるを得なくなった。テキサス州サン・アントニオで講演をすることになっていたんだ。そこで、ニューアーク空港からアメリカン航空に乗ることにした。空港には、新しく大慌てで作成された、機内持込禁止物品のリストがあった。長大、かつ奇怪なリストだ。御禁制の品は、たとえば次のようなものだ。
銃(当然だな) ナイフ(同上) 小型ナイフ(まあ、時節柄仕方ない) 爪切り(なに?) 編み棒(はァ?) 鈎針(ちょっと待て!) 縫い針 棍棒 コルク抜き レターオープナー ドライアイス
この調子で、延々と続いていくんだ。】
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このあと、ムーア氏は、ここで禁止されていない、危険物質・マッチやライター(実際にアメリカでは、ガスライターを使って靴に仕込んだプラスチック爆弾に火をつけようとした男がいたそうです)が、持込危険になっていない原因について検証しています。 「タバコ業界が、ブッシュ政権にかけた圧力のため」という説を彼は紹介しているのですが…事実かどうかはなんとも。 しかし、「自由の国、アメリカ」の閣僚たちは、実際は、みんななんらかの企業と利権のつながりがある(たとえば、チェイニー副大統領は就任以前、アメリカの石油会社、ハリバートン社のCEOを務めていて、株を所有している)という記述には、かなり唖然とさせられるものがあります。 「自由の国」というより、「資本主義帝国」なんじゃないか?などと。
しかし、この上記の禁止物品リストを見ると、当時のアメリカの混乱の度合いの一端をうかがい知ることができます。 少なくとも東海岸の市民レベルでは、現在でも「9・11」は生々しい記憶。 アメリカも病んでいる(この本のなかでは、共和党の悪口が多いのですが、僕は民主党も似たようなもんじゃないかと思うのですが)。 そして、その病を振り払おうと「大量破壊兵器」や「化学兵器」を擁する「悪の帝国」への宣戦布告をしているのではないか、と。 ほんとうは、アメリカだって、怖いから戦争をしようとしているのかもしれません。 でも、イラクのフセイン政権が打倒されても、たぶん、次の敵が創造されるだけ。 爪切りや縫い針まで怖れていた、あのときのように。
結局、今の日本人には、アメリカ人のメンタリティもイラク人のメンタリティも実感としては理解できないのかなあ。 それは、すごく幸せなことなのかもしれないけれど。
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