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2003年03月06日(木)
「睡眠時無呼吸症候群」と「運転できる人」の許容範囲。


中国新聞の記事より。

【広島市安芸区のJR山陽線で二月、上り貨物列車の補助機関車の運転士(26)が気を失って列車が止まった問題で、その後に、運転士が病院で「睡眠時無呼吸症候群の可能性がある」との診断を受けていたことが五日、分かった。

 JR貨物関西支社広島支店によると、運転士は二月十六日午前八時ごろ、広島貨物ターミナルに停車した列車を最後尾から押す補助機関車の運転業務に就いた。走行中の同二十五分ごろ、瀬野―八本松間で列車が動かなくなったため、先頭の機関車の運転士が駆け付けると気を失っていた。二十五分後に意識が戻り西条駅までの運転を再開したという。

 運転士は同日、広島鉄道病院で診察を受け、血中の酸素濃度が低いことなどから睡眠時無呼吸症候群の可能性を指摘されて現在、精密検査の結果を待っている。

 運転士は広島―西条間の補助機関車の運転業務を前夜から仮眠を挟んで三回こなしていた。意識を失う前の点呼では体調異常などを訴えていなかった。同社は睡眠時無呼吸症候群について、特別な検査や申告の制度は定めていないという。

 JRでは、山陽新幹線の運転士が居眠り運転をし、無呼吸症候群の症状を指摘されている。】

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 まさか「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」は、中国地方でしか発症しない病気ではないでしょうから、この話を聞いて僕が思ったのは、「ひょっとして、同様の居眠り(というか、意識消失に近いのかな)は、今まで明らかにされていなかったか、大きな事故につながっていなかっただけで、おそらく、全国各地でかなり頻発していたのではないかということです。
 これに伴い、僕が今朝観たテレビ番組では、キャスターが「大勢の人間の命を預かる運転士さんのことですから、しっかり体調管理してもらいたいですね」とコメントしていた。至極もっともな話ではあるのですが、では、どこに線を引けばいいのか?というのは、たいへん難しい問題です。

 これらの事故を受けて、JR西日本では、全運転士約4400人に「睡眠時無呼吸症候群」を解説したパンフレットと自己診断シートを配布、疑いがあれば検査を受けさせるという方針を決めたそうです。
 しかし、自己申告制だったら、自分の生活がかかっていて、しかも今まで事故を起こしたこともない運転士が、自分の意思で検査を受けようとするかどうかは、微妙なところですね。

 ちなみに、神戸新聞の記事によると
”ある専門病院では、検査や診察の問い合わせが相次いでいるが、機器や人員の関係から受け入れは週6人が限界で、現在1〜2ヶ月間待ち。軽度のSASの治療に役立つマウスピースも、保険が効かずに高価”なのだそうです。

 SASについては、これを機に大規模なスクリーニングがなされていくことでしょう。しかし、僕は正直、今後のことがちょっと心配です。

 それは、この問題をつきつめていくと
「では、SASの人は、自家用車を運転してもいいのか?」という疑問が、必ず出てくるはずだから。
 「大量の人を輸送する交通機関はともかく、自家用車は自分の責任だから」という意見もあるでしょうが、車という乗り物は、「走る凶器」となる可能性を常に秘めています。本人だけが事故で死ぬなら仕方がないのかもしれませんが、他の車や通行人を巻き込んでしまうことは十分に考えられるわけで。
 今まで「居眠り運転」で、ひとくくりにされていたものの中にも、SASによるものは確実に存在していると思われますし。
 だからといって、現代社会で「SAS(その中にも、いくつかの重症度があるようなのですが)の人は、車に乗るな!」ということが義務付けられるのかどうか?

 つきつめれば、判断が遅れがちな高齢者や癲癇の既往がある人(これは現代では、薬で殆どの場合コントロールできますし、実際に問題なく運転されている場合も多いのですが、100%発作が運転中に起こらない、なんて誰も保証はできないはず)、糖尿病でインスリンを使っていたり、肝臓病で昏睡に陥る可能性がある人、などというのも、「運転不適格者」となるのではないでしょうか?
 実際、「運転中に脳梗塞を発症して足が動かなくなり、事故を起こした」なんて事例は、全然珍しいことではないですし。

 どこまでのリスクを現代社会は許容しうるのか?
これは、非常に難しい問題です。田舎では、車がないと生活が難しいところが、たくさんありますし。

 「100%健康な人だけが、車を運転できる」ということになれば、果たして、今免許を持っている人のうちの何割が、今後もドライバーでいられるのかなあ。
 僕は、正直自信ありません。

 そうそう、新幹線の当面の事故防止策は、実はそんなに難しくないと思います。
 「運転席に常駐する人間を2人にする」というのが、個々の運転士の病気をチェックするより確実なのではないでしょうか。
 わかっていても、コストの面で…というのが、現実なんでしょうね。

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