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2003年03月02日(日) ■ |
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人類最大の発明品。 |
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「ニュースキャスター」(筑紫哲也著・集英社新書)より抜粋。
【坂本”教授”の21世紀についての設問と逆に、20世紀までを総括しようという試みも、大世紀末には流行だった。 「人類の最大の発明は何だと思いますか」という世界中の学者、芸術家、知識人、ジャーナリストに発せられた質問もそのひとつだった。私のところにも来た。 多数説がグーテンベルクの印刷機発明だろうことは、容易に想像が付いた。書く、読むという記録に関する動作が飛躍的にたやすくなったことが人間の思考能力を高め、その後の科学的発明の出発点になったにちがいないからである。 私が書き入れた答は「音楽(12音階)」だった。人類は別にだれかが発明しなくても、自然発生的に音楽らしいものを持っていたろう。だが、個々別々に発生したそれに、”兌換性”を持たせたのは12音階という整序法である。そのお陰で、異なる地の異なる人たちが互いにどんな音楽でも演奏でき、聴くことが容易になった。】
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ちなみに、この後の文章で、筑紫さんは「12音階」という概念が、世界の音楽の統一概念となることの「暴虐」についても触れられています。 確かに、「12音階」とは全く違った音階を基盤にもつ民族音楽だって、たくさん存在しているのですから。 それはさておき、20世紀までの人類最大の発明が、グーテンベルクの活版印刷術の発明だというのは、解答した人々が、学者や知識人であることを差し引いても頷けるような気がします。 それまでは、多くの場合「人から人への口伝」もしくは「非常に高価で希少な書物に接すること」でしか受け継がれなかった、様々な知識や経験が、手軽に多くの人間に受け継がれるようになったのですから。 印刷技術の発展によって、科学や哲学といったジャンルの裾野が広がったことは紛れのない歴史的事実。 人間にとって、もっとも身近な娯楽としての役割も大きいでしょうし。
しかし、そう考えていくと、双方向のコミュニケーションが可能で、書籍よりも遥かに簡単に書くことができるネットというのは、ひょっとしたらグーテンベルクの発明を超える革命なのかもしれません。僕たちは、今その渦のなかにいて、それを実感することができないだけで。
あまりにネット上に氾濫している情報を処理しきれるほど、人間は進化しきれていない、というのが現実なのかもしれませんが。
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