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2002年12月16日(月) ■ |
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ミイラは誰のものなのか? |
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朝日新聞の記事より。
【欧米の美術館に収蔵されている古代美術の所有権をめぐり、パリ・ルーブル、ニューヨークのメトロポリタンなどの著名施設が先週、原保有国から返還を求められても応じない意思を連名で表明した。ギリシャや中東などの美術品の「母国」から新たな反発を招きそうだ。 18の美術館・博物館が公表した声明は「我々は一国の市民だけでなく、世界中の人々に奉仕している」と強調。「本来の場所へ、という要求は重要な問題」と認めながらも、原産地ナショナリズムにくみしない考えを明らかにした。
背景には、アテネ五輪を2年後に控え、ギリシャが大英博物館に「エルギン・マーブル」返還を強く求めている事情がある。19世紀初頭、英国の駐トルコ大使がアテネのアクロポリスから持ち出した彫刻群で、最高水準のギリシャ美術とされる。
エジプトが大英博物館が多数所蔵しているミイラの返還を求める意向と伝えられるほか、原保有国側が「奪われた」と主張しかねない美術品は無数にある。ベルリン・ペルガモン博物館のギリシャ美術、ルーブルが誇るエジプトの工芸品やメトロポリタンのイスラム美術などが注目の的という。 】
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11月のはじめに、世界4大美術館のひとつであるボストン美術館に行く機会があったのです。各国から集められた、さまざまな美術品に、僕もすっかり魅了されてしまいました。 そういえば、ボストン美術館は東洋美術が有名で、地球の裏側で浮世絵を見るというのは、すごく不思議な気分でした。 でも、残念なことに、東洋絵画のコーナーは、人がけっこうまばら。 反対に人だかりがしていたのは、近代ヨーロッパの印象派(モネ・マネ・ルノワールetc)のコーナーでした。 たぶん、日本にまったく同じ美術館があったとしても、たぶん日本人も同じような反応を示すのではないでしょうか。
さて、美術品はどこの国のものか?という問題なのですが、欧米の美術館にあるものすべてが不当に持ってこられたものではないということはわかりますが、植民地支配に乗じてとか、エジプトの研究のように、調査団を派遣して、出土品を持ち帰ったりといったものについては、いくら「この美術品の価値に気がついて、いままで大事に保護してきたのは、うちの美術館の功績だ」といったところで、今ひとつ説得力に欠けると思います。 「誘拐してきた子供だけど、立派に育ててやったからうちの子だ」といわれても、納得できないですからねえ。 しかし、鑑賞しに行く側からすると、ルーブル美術館のようにあらゆる国の美術品が一箇所に集まっているほうが、便利ではあるんですよね。
まあ、確かに「世界中の人々に奉仕している」のかもしれないけれど、「世界中ではあるけど、特定の国の人たちには厚く、それ以外の国の人々には薄く」なっているのも事実でしょうし。 しかし、最大の問題点は、今の美術品の価値というのが、欧米の基準で判断されたものが世界基準になってしまっているということなのかもしれません。 日本人なら、日本人がいいと思う美術品の価値をを自分の国で育てていく必要もあるんじゃないでしょうか? それじゃ客が呼べない、というのが悩みの種なんでしょうけど。
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